第2話 行動開始 マエル視点
「…………これはいいね。この方法でいこう」
思案を始めてから、およそ4時間後。顎に当てていた手を離し、同時に腰をかけていた椅子から立ち上がる。
妹達の性格性質を加味してシミュレーションを行い、失敗する未来が見えなかった。そこでこの策をベースに採用すると決め、実行に必要な準備をすることにした。
「ユーゴー。君に頼みがあるんだ」
「はっ、マエル様。わたくしは、どのように動けばよろしいのでしょうか?」
「これから『ルナレイク』へと向かい、まずは現在置いてある中で最も高価なイヤリングを購入して欲しい。そしてオーナーに依頼をして、僕の名を伏せて――このカードに記している人物からのプレゼントとして、ロゼに届けて欲しいんだよ」
この辺りでは最も高級なものを扱う宝石商を訪ね、別人からの贈り物として届けて欲しい。部屋を出た僕は、廊下に居た従者にそう伝えた。
「……別人の名、でございますか? 折角の贈り物なのに、ですか……?」
「ああ、そうなんだよ。これはプレゼントの皮を被った『餌』だから、それでいいんだよ」
頭の中にある案をユーゴ―にも伝え、肩を竦めてハズオルエ邸がある方角を一瞥する。
コレがロゼのものではなくなるように、しないといけないからね。僕の名前を出してしまうのは、逆効果。アメリが奪いやすくなるように、ロゼが懇意にしていた卒業生の――
「彼女は了承済みで、君が名前を出しても問題はない。……できれば僕が出向きたいのだけれど、並行して動きたいことが2つあるんだよ。そちらは頼んだ」
「御意。マエル様、そちらに関してお手伝いできる事はございませんか?」
「片方は家の仕事で、もう片方は諜報――更に効果が出るように、アメリ達の周辺を調べるだけなんだよ。こっちは大丈夫だから、そっちは任せた」
そうして僕は彼を見送り、踵を返す。体の向きを変えたあとは廊下を暫く歩き、1階にある執務室を――父上を訪ねた。
「先ほど、馬車が出たようだな。もしや、ロゼくん絡みか?」
「ええ、そうなのですよ。あちらで看過できない問題が発生したため、影3人を使用します」
我がザルテーラス侯爵家の『武器』の一つは、現在僕が指揮権を持っている。とはいえ僕は次期当主であり、現当主ではない。そこで父上に使用と行動内容を伝え、それが済むと屋敷から3つの人影が飛びだしたのだった。
「みんな、よろしく頼んだよ。……さて、それでは僕も頑張ろうかな」
そんな姿を見届けると自室に戻り、今度はデスクにつく。
ここには数日中に処理をしなければならない書類が複数あり、来週は1~2日間部屋でその作業を行うようになっていた。けれど作戦が動き出したらそっちに集中する必要があり、そういうことをしている場合ではないからね。
そういった『拘束』が発生しないよう徹夜で処理を行い、翌日の午後4時にようやく作業が終わったのだった。
「ふぅ、やっと片付いた。これで、アメリ達の問題に集中できるようになって――アメリ達といえば。そろそろ、餌に食いついている頃かな?」
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