第16話 真実 アメリ視点(3)

「このまま僕に追い返されて、対応しきれずセレステの手にかかる。僕の命令に従い、安全な場所で匿われる。これが、2つの選択肢だ。さあ、君達はどっちを選ぶ?」


 そんなのっ、2つめに決まってる! でも……。


「命令……。それは、いったい……? それを把握しないと、返事ができまない――できませんわ……」


 お母様の言う通り。何が出てくるのか分からないから、そっちを選べない。


「マエル様、教えて――教えてください……。それは、なんなのですか……?」

「命令。その中身は、『建物の中から一生出るな』だよ」


 ザルテーラス領内の僻地にある、古びた建物――かつて研究者が山岳の調査の際に使用していた、小さな研究所。ソレを改築してあげるから、そこで暮らせ。

 命令は、そんな内容だった……。


「君達は世の中で活動していると、害しかもたらさない迷惑人間だからね。死ぬまでそこで、大人してもらおうと思うんだよ」

「めっ、滅茶苦茶ですわっ!! 場所も住居も酷くっ、軟禁とおなじですわっ!!」

「そんな場所でそんな暮らしをしてしまったら、人生が滅茶苦茶になるっ!! できるはずがありませんっ!!」

「でも、生きてはいるだろう? 死ぬよりはマシじゃないかな?」


 マエル様は立てている2本の指を揺らし、また嗤う。


「それに、『人生が滅茶苦茶になる?』だって? 自分達はロゼの人生を滅茶苦茶にしようとしていたのに、自分がそうなるのは嫌なんだね? 『自分がされて嫌なことは、他の人にしてはいけない』。それを学ばなかったのかな?」

「「っっっ」」

「ああそうか、学ばなかったからこうなっているんだね。納得の結果だ」


 嗤ったあとは、嫌みったらしく手を叩いて……。それが終わると、また2本の指が立った。


「ごめんごめん、脱線してしまったよ。で、どちらを選ぶのかな? 1と2,どっちに――」

「マエル様!! 妻と娘はっ、わたくしが責任を持って矯正いたします!! ですのでどうかっ、寛大なる第三の選択肢を――」

「卿。ロゼへの悪意がなかったとはいえ、も同罪だ。そんなゴミの言葉になど耳を貸すはずがないだろう」


 ハズオルエ卿、お前には別のお礼を用意してある。覚悟しておけよ――。そうしてお父様はあっさり黙らせられて、再びわたし達に視線が戻ってきた。


「さあて、返事を聞こうか。アメリ、ベル。制限時間は、5秒だ。1と2、どっちを選ぶ?」

「「………………」」


 どんなに過酷でも、死ぬよりはずっといい。

 だからわたしとお母様は、頷き合って……。だからわたし達は――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る