第25話幸せな日

「ルイーゼ、ルイーゼ、何処に居るんだ?」

「旦那様、私は此処ですわ」

ルイーゼ夫人は、今日の食事会に持って行くためメイド達と一緒にカップに入ったケーキを作っていた。

ルイーゼ夫人はお菓子作りが好きで良くロバート伯爵とメイド達使用人に振る舞っていた。

「何を作っているんだい?甘い香りの良い匂いがして美味しそうだね。一つ貰えるかな?」

ロバート伯爵は、大きな皿に並べたケーキに手を伸ばし、それに気付いたルイーゼ夫人がパチンとロバート伯爵の手の甲を叩いた。

「ダメです旦那様、これは今夜の食事会にお義母様達とカレンに食べて貰うのですから、旦那様もその時一緒に食べて下さい」

「ええっ!?お預けか……一つくらい良いじゃないか」

「ダメです……うっ!?」

「ルイーゼ?」

「奥様?」

ルイーゼ夫人は手で口を押さえ離れにある水呑場に向かい、その後をバタバタと走るロバート伯爵は水呑場で吐くルイーゼ夫人の背中を摩っていた。

「…ルイーゼ…大丈夫かい?今夜は止めていた方が……」

「はぁ…大丈夫ですわ旦那様、最近余り食べていませんでしたので、今日作りましたケーキを味見をして胃が驚いたのですわ」

メイドの一人がメイド長を呼び、慌てた様子で駆け寄ったメイド長はルイーゼ夫人を見て声を掛けた。

「奥様…最近の奥様のご様子を見ましてお食事もお進みで無いご様子でした…旦那様、わたくしの憶測に過ぎませんが、奥様はご懐妊ではないでしょうか……」

「ご……!?か…懐妊とは、まさか……」

「……あ、赤ちゃん!?」

ルイーゼ夫人はお腹に手を当て驚きと喜びで涙が止まらなかった。

「ルイーゼ!」

「旦那様……」

二人は抱き合い喜んだ。

「旦那様、医師をお呼び下さい、まだはっきりと決まった事ではありません」

「ああっ、分かった。ルイーゼ安静にむやみに動き回る事はしないでくれ」

「ふふっ、旦那様ったら…」

ロバート伯爵は医師を呼びに向かい、ルイーゼ夫人はそっとお腹に手を当て「夢ではありませんように…」と微笑みお腹を摩っていた。

医師の診察を受けていたルイーゼ夫人は妊娠している事を告げられた。

「ご懐妊で御座います。ロバート伯爵様」

「おめでとうございます。旦那様、奥様!」

「ありがとう皆、ありがとうルイーゼ」

「旦那様…」

ロバート伯爵はルイーゼ夫人に口付けを交わしお互い喜び抱き締めていた。

「今夜の食事会は両親も喜び素敵な夜に成るよルイーゼ」

「…旦那様…私、嬉しくて……」

涙を流すルイーゼ夫人の頬にロバート伯爵は指で涙を拭った。

「これからは、家族三人幸せな家庭を築き上げるよ」

ルイーゼ夫人とロバート伯爵は今夜の食事会が楽しみへと代わった。

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雫の花 冬猫 @meknko

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