第13話ユリウス侯爵を想い続け
ロバート伯爵の屋敷を一台の馬車が出て走り出した頃、馬車の中ではロバート伯爵の母親とカレン嬢がお互い向き合い話しをしていた。
「でも驚いたわ、カレンさんとルイーゼさんが学生時代の親友でロバートまでも知り合いだなんて、これも何かの縁よね」
「そうですわねおば様、わたくしも驚きましたわルイーゼとロバート様が結婚をしていたなんて…おば様から「息子夫婦がいるのだけどカレンさんとお友達に成れると思うの会ってみない?」と言われた時、まさかおば様の息子様がロバート様だと思いませんでしたわ」
「ホホホ、数週間前にカレンさんと初めて生地専門店で会った事を思い出すわ、生地選びの途中生地を落としてしまった時カレンさんが拾ってくれた時は嬉しかったわ」
「わたくしもメイド友達と一緒に生地を見に付き添いで来ていましたから、おば様の側を通りました事が始まりでしたわね」
クスクスとお互い笑顔を見せ、ロバート伯爵の母親とカレン嬢は連絡を取り合うように成った。
「メイドのお友達というのは、以前御話しをしていましたブランシェ家のユリウス侯爵の屋敷でカレンさんは働いて居るのかしら!?」
「はい、やっとの思いでメイドとして採用を貰えたんです。それまでメイドの面接を受けたいと御願いしていましたが、断られてばかりで…」
「まあ、こんな良いお嬢様を断るなんて面接をした相手が悪かったのね」
「ふふふっ……」
カレン嬢はメイドの面接の時を思い出しクスクスと一人笑っていた。
(ユリーナ様が出産の為ご実家に帰る事に成り、その付き添いにメイドが数名屋敷を離れる事に成ったのを噂で聞いたわ。今屋敷ではメイドが足りないかもと思ってユリーナ様が不在の時に面接に行った事を思い出すわ…メイドの募集は無い事は知っていたけど、屋敷にユリウス様がいたらと思い御会い出来るだけでもと、屋敷へ向かったわたくしは凄いと自分で褒めたわ…そして念願のユリウス様と御会いでき、凄く嬉しかったわ学園を卒業して御会いした事もなかったんですもの、何度お屋敷を通り過ぎたかしら…学園にいた時と替わらない素敵な方だからユリーナ様を嫉妬していたわ。
ユリウス様はわたくしの事を覚えていない事に覚悟はしていたわ、だからわたくしはメイドの面接をユリウス様に御願いをしたのよ…ようするに賭けよね。
屋敷ではまだ小さな御子様もいたからメイドが必要だと、わたくしはユリウス様の想いを隠しメイドとして屋敷で働きたいとユリウス様に頭を何度も下げて御願いしたわ。ふふっ、その時のユリウス様の顔は見たことも無い慌てようで「君が私の屋敷で働きたいと言うなら明日にでも来て貰えたら助かるけど」と採用の話しを貰った時は凄く嬉しくて思わず泣いてしまって、またユリウス様を困らせてしまったわ…ふふっ。
ユリーナ様はまだご実家にいるんだから屋敷でユリウス様と御会いするのが毎日が楽しいわ。
ユリーナ様が屋敷に戻った時わたくしが居ましたら驚くでしょうね…ふふっ、面接の採用を決めるのはいつもユリーナ様だったんですもの…学園からわたくしがユリウス様を今もお慕い追いかけている事を知っているのだから……ユリウス様当主が面接を直接受けてくれたのよわたくしを屋敷から追い出す事なんて出来ないわ)
クスクスと思い出し笑いをするカレン嬢にロバート伯爵の母親は声を掛けたが「何でも在りませんわ」と笑顔を向けていた。
「でも、貴女は伯爵家の一人娘だと聞きましたよ、メイドの仕事をしなくて良かったのでは?」
「ふふっ、おば様お忘れですか?わたくしの想い人がおりまして、その方を何年もお慕いしているのですよだからわたくしはその方の側に居ることが出来たらと思い、メイドの教育を受けメイドに成ったのです」
「……そうだったわね…」
ニコッと笑顔を見せるカレン嬢にロバート伯爵の母親は小さく息を吐いていた。
(忘れていたわ、カレンさんの想い人はユリウス侯爵だったわ…地位も容姿に性格も揃えて居ますユリウス侯爵が羨ましいわ…カレンさんの想い人がどうしてロバートでは無いのかしら……)
「…カレンさん、時々でもロバートとルイーゼさんの御話し相手をして貰えないかしら?久しぶりの再会ですから二人とも喜んで暮れるわ」
「ロバート様の屋敷へ遊びに行っても良いのですか?」
「ええ、時々私も一緒しても良いかしら?」
「ふふっ、勿論ですわおば様」
「今日、ロバートの屋敷に貴女を呼べて良かったわ。御食事の日取りは後で知らせるわね、カレンさん御食事会には来てくださるかしら!?」
「はい、喜んで御伺いしますわ」
「楽しみだわ」
馬車の中でロバート伯爵の母親とカレン嬢の笑い声が響き、カレン嬢を息子のロバート伯爵に紹介出来たことに満足していた。
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