雫の花
冬猫
第1話出会い
貴族達が通う学園は今日も朝からキラキラと輝き朝の挨拶を交わし、そして一人の男子もまた輝きをみせていた。
「お早う御座います。ユリウス様」
「お早う御座います、今日も素敵ですユリウス様!」
「ああ、おはよう、みんな可愛いね」
「きゃ~っ!」
ユリウス・ブランシェ十八歳、侯爵家の長男に生まれ剣の達人と知られ王の護衛騎士として任務を務めている若き騎士でもあり、勉学に運動そして容姿は男性で在りながら美しく、周りはいつも女子に囲まれていた。
「ねえ、ルイーゼ、女子のあの固まりの中に居るのはユリウス先輩よね!身長が高いから直ぐに分かるわ」
「うん、そうね」
「な~に、その興味在りませんみたいな返事して」
「えっ、そう?」
「ユリウス先輩は私達学園のプリンスなのよ、皆今日のお茶会の席を狙っているのよ」
ユリウスは毎日のように学園の中にある庭園でお茶を楽しむ習慣があり、運が良ければユリウスと一緒にお茶を楽しむ事が出来る。
「今日は絶対ユリウス先輩とお茶を一緒にするんだから、まだ一度もお茶を一緒にした事無いんだからいつも邪魔な人が来るんだもの」
「ユリウス先輩とお茶をして楽しいの?」
ガクッと首を下に向けたカレンに驚いたルイーゼは「私変な事言った?」
「ううん…ルイーゼがユリウス先輩に興味が無くて安心したわライバルが一人減ったわ」
「私一人減ってもあの人数では……」
ユリウスを囲む女子達を見ていたカレンとルイーゼの側をすぅ~っと通り過ぎる一人の女子に、二人は目で追いカレンは「はぁ…」と小さく息を吐いた。
コッコッ…とゆっくり歩く足音にユリウスの周りにいた女子が全員振り向き固まっていた。
「お早う御座いますユリウス様、今日も人気者で良い笑顔ですわね」
ニコッと不敵に微笑む女子の名は、ユリーナ・ロベール伯爵家の長女でユリウス・ブランシェの婚約者でもある。
「やあ、ユリーナ、お早ういつ見ても綺麗だね」
「き…!?」
カアーッと顔を真っ赤に染めるユリーナにユリウスはフッと笑みを見せ、その様子を見ていたユリウスの周りにいた女子達がコソコソと離れユリウスの側にはユリーナだけと成った。
「……彼女達が帰りましたわ」
「そうだね」
ユリーナの側へ寄るユリウスはニコッと微笑みユリーナはその顔を見て恥ずかしそうにそっぽを向き、二人は廊下を歩き出した。
「はぁ……いつ見てもお似合いだから何も言えないな~っ」
「カレンはユリウス先輩に婚約者が居るのにどうしてそんなに追いかけるの?」
「えっ、だってユリウス先輩が好きだから…婚約者のユリーナさんがいても追いかけていたらもしかしてと思って…私はユリウス先輩が好き」
真っ直ぐな目で見えなく成った二人の姿を見つめるカレンに、ルイーゼが手を握り引っ張り歩き出した。
「帰りにケーキが美味しいお店に行こう」
「ふふっ、そうねルイーゼに太って貰おっかな~」
「ええっ、ひっど~い」
クスクスと笑い振り返り歩き出そうとした時ルイーゼは足のバランスを崩しグラッと身体が倒れ掛けた。
「きゃっ!?」
「危ない!」
グラッと身体が傾き倒れそうに成った身体を一人の男子が支えてくれた。
「あ…有り難う御座います…」
「大丈夫かい?前を見ていないと危ないよ」
「ごめんなさい…」
「気をつけて」
ルイーゼの身体を支えていた手を放した男子はそのまま歩き二人の側を離れた。
ルイーゼは胸に手をやりホッと息を吐き、驚いたのと初めて男子が身体を支えた事にドキドキと煩く成っていた。
「ルイーゼ、大丈夫?!」
「えっ、う、うん…大丈夫ちょっとびっくりしたけど」
「さっきの男子先輩だったのかな、バッチの色がユリウス先輩と同じだったから…でも、ちょっと良いかもって思っちゃった」
「えっ、カレン、貴女ユリウス先輩は諦めたの?」
「諦めて居ないわよ、でも、恋愛は自由何だし男子に声を掛けてもお友達でも良いじゃない」
「はぁ……カレンたら」
「さあ、行きましょう帰りはケーキを食べるわよ」
「うん」
(……まだ、心臓がドキドキしている…また会えるかな?ちゃんとお礼言わなきゃ……)
この二人の出会いがルイーゼとロバートの運命的な出会いでもあり、ルイーゼにとって苦難の始まりでもあった。
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