第16話甘い時間…
ブランシェ家のメイド達の朝は早く、この日は早朝からメイド長の話しがあった。
「お早う御座います。皆さん、今日は皆さんにお知らせがあります。明日奥様が屋敷へ御戻りに成ります」
ザワッと集まったメイド達に使用人達が、ユリウス侯爵の妻であるユリーナ夫人が屋敷に帰ってくると聞きお互い顔を見て話し、そして一番驚いた顔を見せていたのはカレン嬢だった。
「静かに!明日お帰りの時間は未定ですが、今日はいつも以上に作業を丁寧に御願い致します。明日からブランシェ家には家族が増えますので念入りに作業を御願い致します。わたくしからの御話しは以上です、皆さん各自決まりました持ち場へ御願いします。」
『はい、分かりましたメイド長』
メイド達に使用人達はメイド長が話しを終え、ザワザワと興奮が治まらない様子だった。
「明日奥様が屋敷に帰って来るなんて思わなかったわ」
「はあ…旦那様との時間が今日で終わりだなんて……明日からまたいつもの御二人の甘い時間が戻るのね」
カレン嬢は近くで気になる話しを耳にして尋ねた。
「……ねぇ、御二人の甘い時間ってなんの事?その御二人は…ユ…旦那様と奥様の事?」
「ああっ、そうだったわねカレンは奥様が留守の時に屋敷に雇われたんだったわね、甘い時間って言うのはメイドの私達が居てもお構い無しに奥様が旦那様といつも一緒にいて、時には…こほん、私達の目の前で口付けを何回もして愛を囁くのそれだけなら私達もなんとか我慢出来るわ…でも」
「……でも?まだ、何かあるの?……」
「大きな声で話せないからカレン耳貸して」
「耳?」
一人のメイドがカレン嬢に耳元で小さく話し出した。
「夜の行いが聞こえる時があるの」
「!?」
「……き、聞こえるって…それはつまり……」
カタカタと震える手を両手で握り締めメイドが言わなくても分かっていた。
「…カレンも旦那様の事が好きなんでしょう!?」
「え!?ど、どうして」
「分かりやすいんだもんカレンって、しっかり者なんだけど好きな人が側に居ると目で追っているし、庭の掃除なんて何度も同じ場所がそこだけ綺麗に成っているから…旦那様を見ながら掃除していたんだって分かった」
「……はぁ…そんなに分かりやすいのかな……」
「誰だって好き人が側にいたら一緒に居たいじゃない私も旦那様の事が好きだから」
「!!」
カレン嬢はメイドがユリウス侯爵を好きだと聞き目を見開きメイドの顔をじっと見ていた。
「でも、奥様がいる旦那様を好きに成ると苦しいな…私だけを見てくれないから……」
「……」
クスッとメイドはカレン嬢に笑顔を見せた。
「夜は…お手洗いに廊下を歩かない限り聞こえ無いから……」
「……聞いた事は…」
「勿論何回もあるわよ、でも何年も屋敷に勤めて居ると馴れてしまったのかな…怖いわね習慣て」
「……」
「まぁ、夜は早く寝た方が良いって事を教えてあげるわ、さあ、今日も頑張ろうカレン」
「ええ……」
カレンはギュッと握り締めている両手を「はぁ……」と顔に手を当てた。
(…ユリーナ様の帰りはまだ先だと思っていた…生まれたお子様を連れて屋敷に戻るのね……嫌だわ…二人の夜なんて聞きたく無いわ…ユリウス様がわたくしを見てくれたら……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。