第17話屋敷へ来ないで

「奥様、今日は晴れていますので外でお茶をお持ち致しましょうか?」

「そうね…お願いしても良いかしら」

「はい」

メイドはルイーゼ夫人に外でのお茶を進め、屋敷の建物の近くにある丸いテーブルの椅子にルイーゼ夫人は座った。

空を見上げ雲が流れ鳥の囀ずりを聞きルイーゼ夫人は安らいでいた。

ロバート伯爵の母親とカレン嬢が庭園に来て以来、屋敷へカレン嬢は来る事もない為ルイーゼ夫人の心は少しホッとしていた。

「……お義母様から食事会と言われ直ぐに招待があるのだと思っていたけど…まだ招待の手紙が届いて居ないからホッとしている……旦那様には食事会へ行きますと言ったけど、本当は行きたく無いのが本心…」

空を見上げ目を閉じるルイーゼ夫人は今の幸せを壊されたく無いと心の中で声を出していた。

サクサクと歩く足音に気付いたルイーゼ夫人は、メイドの一人がポットとカップを持ちルイーゼ夫人の側へ歩いていた。

「……あの、奥様…」

「どうしたの?持ったままお話しをしたら重いわよ、テーブルの上に置いたら良いわ」

「は、はい…」

カチャカチャとテーブルの上にポットにカップ皿等を置くメイドは、途中手を止めルイーゼ夫人に声を掛けた。

「あの…奥様、屋敷の外でカレン様が御見えですが…」

「えっ、カレンが!?」

今まで笑顔を見せていたルイーゼ夫人は笑顔が消え険しい表情へと見せていた。

「……奥様、どう致しましょう…」

「……」

屋敷のメイド達に使用人達は、ロバート伯爵の両親にルイーゼ夫人が心を傷めている事は知っていた為、カレン嬢の事も屋敷の中では噂に成っていた。

「追い返す訳にはいかないから…私の所へ連れて来てくれる?」

「……分かりました」

メイドはカレン嬢を呼びに行きルイーゼ夫人は「ふう…」と息を吐き目の前に用意されたカップを眺めていた。

「……学生の頃はこんな気持ちでは無かったのに…」

サクサクと二人が歩く足音に顔を上げ「ルイーゼ久しぶり」と笑顔を見せるカレン嬢に、素直に笑顔を見せる事が出来なかった。

「今から、お茶だったの?ルイーゼも好きよね」

「……」

クスッと笑みを見せるカレン嬢は今日は気分が良いように見えていた。

「私も飲みたいわ、カップを持って来てくれる?」

「あ、はい……」

メイドはまるで屋敷の夫人の様な態度を見せるカレン嬢に驚き、カップを取りに屋敷の中へ入って行った。

(……屋敷の夫人気取りの様に見せて…お義母様のお気に入りだから?メイド達の噂話しがまた増えたようね…)

「ロバート様は?」

「……お仕事だけど…」

「残念だわロバート様の顔を見たかったのに」

「……」

鼻唄を歌い髪の毛を触るカレン嬢を見てルイーゼ夫人は、ロバート伯爵が居ない事に安堵を感じていた。


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