第21話告白をしても…

「ユリウス様、貴方が好きです……」

メイドであるカレン嬢から告白を受けたユリウス侯爵は、手に持っていた絵本をゆっくり綴じた後、カレン嬢に向いていた顔を逸らし俯いていた。

「…済まない…私は君の想いを受け取る訳にはいかない…私は妻に子供達が居る…後妻を娶る事も考えては居ないんだ」

ユリウス侯爵の声を聞き隣で俯くカレン嬢は、黙ってユリウス侯爵の話しを聞いていた。

「……分かっています。旦那様を困らせたくてわたくしの気持ちを御話ししたのではありません…ただ旦那様に御伝えしたくて…申し訳御座いませんわたくしは

旦那様を困らせて居るのですね」

「……」

「わたくしはメイドを辞めないと駄目なのでしょうか…」

「…何故そう思うのかな?」

「……旦那様にわたくしの気持ちを御伝えしました事でわたくしの事を嫌に思われると思って…」

「それでメイドの仕事を辞めると言うのかな?」

「いえ、いいえ、わたくしはメイドの仕事を辞めたいとは思っておりません、旦那様」

「…私の側に居ると辛いのは君だよ…もうすぐ妻も帰って来る……屋敷内では私と妻の話しをメイド達から聞いた事は無いかな?」

カレン嬢は膝に置いていた手を握り締め、メイド仲間達が話していた事を思い出していた。

「……御話しは聞きました…それでもわたくしはお屋敷を離れません、旦那様にわたくしの気持ちを御伝えしましたがメイドとして務めてまいります」

「…分かった…私は何も言わないよ。これからもメイドの仕事を頑張ってくれ」

「はい、有り難う御座います…わたくしの気持ちを御聞き下さいまして有り難う御座います」

カレン嬢は長椅子から立ち上がり隣で座っていたユリウス侯爵に頭を下げ、メイドとして今まで通りブランシェ家へ務める約束をユリウス侯爵に伝えていた。

(…今は駄目でもいつの日かユリウス様を振り向かせて見せるわ…今はその時では無いわ)

「…私は部屋へ戻るよ、君はまだ此処に居ると良いだろう…」

「はい、分かりました…」

ユリウス侯爵は長椅子から離れ屋敷の中へと歩きカレン嬢は緊張の余り力が抜け、長椅子に座り出した。

「…ふぅ…ユリウス様に告白したのにスッキリしないわ……振られてしまったんだもの…分かっていた事だから、私の他にユリウス様に告白して断られこの屋敷を去って行くメイドが多いと聞いたけれど…ユリウス様が真面目な方で良かったわ。告白した子を皆受け入れたら大変だもの、私が……」

カレン嬢は長椅子から離れ掃き棒を持ち、屋敷へと戻る時、ガラガラ、カッカッ…と門の方から音が聞こえ

「え!?もう、戻って来たの?」

カレン嬢は屋敷の壁から覗くように離れで見える馬車に門の前にはメイド達がパタパタと走り、執事に使用人達が門の前に集まり、その後からユリウス侯爵が笑顔を向けて歩く姿をカレン嬢は手を胸にあて、笑顔ではなく苦痛の顔で馬車から降りる一人の女性を見ていた。

「……ユリーナ・ブランシェ…」

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