第24話結婚をすれば……
「街で珍しい紅茶が合ったの、貴女に一番に飲ませたいと思っていたのよ」
ロバート伯爵の母親がカレン嬢と一緒にお茶を楽しんでいた。
「美味しいですわおば様、こんなに美味しい紅茶を飲めるなんて幸せ」
「ふふふ、大袈裟ね。今度一緒に街へ買い物に行きましょう」
「嬉しい!おば様とお買い物に行けるなんて」
ホルン家の本家にある庭園で紅茶と花を楽しんでいた。
「カレンさん、最近ロバートと会っている?」
「いえ、ロバート様は御忙しい方で、屋敷へ訪ねましても留守が多いので御会いしていませんわ」
「ごめんなさいね、せっかく来てくれたのにロバートが不在だなんて」
「いえ、わたくしが突然お屋敷伺いますのがいけないんです」
「今度、ロバートにも話しておくわね、カレンさんが来て下さったのよ、会わずに帰るような事に成らないようにルイーゼさんにも言っておくわね」
「有り難う御座います。おば様」
カレン嬢はカップを手に持ち数時間前の事を思い出していた。
「あの、メイド長、奥様にご挨拶をしたいのですが…奥様は御部屋の方でしょうか?」
「奥様に挨拶ですか?」
「はい、わたくしは奥様がお留守の時に旦那様から雇って頂いて、奥様にご挨拶をしておりません」
(本当は挨拶なんてしたくないわ、でも、ブランシェ家で雇われている以上無視出来ないもの…)
「…そうでしたね、奥様も御戻りに成りました事でもありますから……」
メイド長は考え事をするかのように暫く黙っていた。
「……今日は奥様に御会いするのは止めましょう」
「…御都合でもあるのですか?」
「……今は、旦那様と奥様は御二人の時間を御過ごしなのです。挨拶は日を改めた方がいいでしょう」
「……御二人の時間……」
!!
カアーッ!と顔を赤く染め下を向くカレン嬢の顔は今にも涙が出そうで、膝の上に置いていた手を握り締めブルブルと震える身体に熱がこもった。
「…」
(……その後は、午後から急用だと嘘を言って出てきたのよね…こうなる事は覚悟の上でユリウス様の屋敷に入ったじゃない…)
「カレンさん?」
「えっ、はい、おば様」
「急に黙ったままで何度も呼んだのよ、具合いでも悪いの?」
「いえ、大丈夫です。おば様」
「そう?それなら良いのだけれど…カレンさん、ロバートの事どう思うかしら?」
「ロバート様ですか?御優しい方で一緒に居まして楽しいですわ」
「ふふっ、有り難う。貴女にそう言って貰えて嬉しいわ……カレンさん、もし貴女さえよければロバートと結婚を考えて欲しいと思っているの」
「!!」
「貴女がユリウス侯爵をお慕いしている事は分かっているわ」
ロバート伯爵の母親と会うたびに、ロバート伯爵との縁談を進めていた事をカレン嬢は知っていた為、結婚の話しが出ても驚きはしなかった。
「……でも、ルイーゼがわたくしとロバート様との結婚を許してはくれませんわ…」
「ルイーゼさんの事は心配しなくても大丈夫よ。子供がいない事を気にしているのは分かっているの、私達はルイーゼさんの重荷を軽くしてあげたいのよ…親友の貴女との子供でしたらルイーゼさんも可愛がってくれるわ」
「……子供…」
(……わたくしが結婚をすればユリウス様はわたくしの事を気に掛けて暮れるのかしら…子供が出来た時は相談にのって暮れるかしら……)
カレン嬢のロバート伯爵との結婚の返事には時間が掛かる事はなかった。
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