概要
【あらすじ】
利休に切腹するよう伝えよ――そう命じられた「私」が、堺に蟄居する利休の茶室を訪れる。
利休は「私」に「きょうを読む」ことの愉しみの話をする。
その話は、何故、秀吉が利休に切腹を命じたのか、という話に繋がって――
【登場人物】
千利休:茶人
豊臣秀吉:天下人
坂内宗拾:秀吉の御伽衆
【参考資料】
「茶の本」岡倉覚三(青空文庫)
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!千利休、かの茶人と最期に関わった者たちの話
天下人である豊臣秀吉が千利休に切腹を命じた話は、歴史好きならずとも知っている有名な史実です。
尾張の農民から天下人にまで上り詰めた秀吉が一介の茶人を何故恐れたのか。利休の死は諸説残されていますが、死の真相は謎に包まれています。
この作品では、秀吉から利休に切腹を伝えるべく「わたし」が利休のもとに訪れ、そして利休は「わたし」にとある話を語り出します。
きょうを読む。
その二つの意味が明らかになったとき。
利休の切腹に関わった二人の人物の名が明らかになったとき。歴史の中に隠された一つの謎が紐解かれた気がしました。
短い話の中にも登場人物たちのドラマがある。何度も繰り返して読みた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!己の死と相対する茶人・千利休。彼に死を運ぶ三人は何を思うのか。
茶人・千利休は、天下人・豊臣秀吉に切腹を命じられた。
それから二十五年の月日が経ったある日、あるところ。
商いをしている亭主と、彼に茶に招かれた客の会話から、本作の物語は始まります。
その商人は、歴史的な茶人、千利休に死を告げに来た伝令であった。
動揺する周囲に比して、泰然としているのは死を命じられた利休、本人。
彼が千々に心を乱す中、恬然とお茶をたてて会話をして、そしてその役目を全うさせようとする利休。
その会話で物語は進みます。
どこまでも恬淡として死を客観視できる利休、その在り様は後に生きて行く者達に心を配ろうとするほど。
死を命じた秀吉の心までを慮る利休の人間離れした心の持ち方…続きを読む - ★★★ Excellent!!!偉大な茶人の死とそれに関わった人々の物語
鞘を取りに行った「拙者」は、その店の主人に誘われて、彼の立てた茶を飲むことに。その際に主人は、かの千利休に切腹を申し立てに行った時のことを話してくれた。
とある日本史の分岐点を、関わってしまった人々の会話で紡ぐ、短編歴史小説。カクヨムWeb小説短編賞2021短編特別賞を採った、構成や描写に全く隙のない一本でもあります。
強い信念を持った人同士が関わると、摩擦が起き、どちらかが破滅の運命に導かれるのも、歴史上では避けられないのかもしれません。しかし、何か揺ぎ無い心が誰かを変え、大きく歴史を動かすのも、起こりえる事なのだと思いました。