06 跫
「――そろそろ、入ったらどうや」
突然、利休さまはそうおっしゃいました。
私には、何が何だか分かりません。
もしや、利休さまは先約があって、その先役の誰かがいらっしゃり、その誰かを茶室で待っていたのかと、腰を浮かせました。
「
それが
「この
利休さまは首を振り振り、戻ってらっしゃいました。
「何や、折角
ぼやく利休さまに、私は、誰だったんですか、と聞きました。
利休さまは、ああ、と
「わての首斬り役や」
「首斬り!?」
「何や、宗拾はんかて、薄々ゥ気づいとったんやろ? こういう、こういう切腹を伝える使いってなぁ、相手が腹を召す時ィ、首ィ斬るもんや。お武家はんの
「……そやけどなぁ、さしもの関白はんかて、宗拾はんにそれやらすのは酷や思たんやろ。宗拾はんは、わての弟子たちを、あの茶ァ
「お、囮?」
「せや、囮や。関白はんの御伽衆の宗拾はんやったら、わての弟子たちが恨んでも、そら関白はんを敵に回すことになる。やからの使いやろ。せやけど、実際に腹斬るゥなったら、そらスパッと斬れるお方を陰で迎えに寄越して、わてが腹ァ召す時、苦しまんよう
いやいや、確実に
己の亡き後に、今度こそ関白さまの意を汲む、それこそ機嫌が読める
ひとしきり笑われると、利休さまは真顔に戻りました。
「……しゃあけど、まさか、あの、にわかに
南無南無と利休さまは手を
それから、障子の隙間から覗く雪を見て、
「いくら村育ちの不作法者やから言うて遠慮しィて、こないな寒い中ァ待っとったら、冷えるでぇ。どうしてもっちゅうんなら、
そうすると首斬り役の方、つまり貴方が茶室の前から去っていく気配がしました。
確かに利休さまのおっしゃるとおり、
しかし。
「よう聞くと、分かる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます