美術収集家の松方幸次郎と、画家のクロード・モネが、第一次世界大戦下のパリ郊外にて、相まみえたかもしれない。本作は、そんなifの世界を描いたヒューマンドラマ短編です。
西洋美術を日本に持ち帰り、美術を志す者たちに見せたいという夢を持つ幸次郎は、モネの画(え)を自分用に譲ってもらえないかと持ち掛けます。
対するモネは、幸次郎に意外な勝負を持ち掛けます。若き日に見たとある画に、なぜ自分が感銘を受けたのか、考えてほしい――と。
人は、なぜ、芸術作品に心を揺さぶられるのでしょうか。全貌を視覚で捉える「画」は、言葉を大きく飛び越えて、鑑賞者の胸に届きます。そんな感動を、言葉で丁寧に繙いていく文章は、非常に真摯な筆致で綴られていて、芸術や創り手に対する畏敬の念を感じました。
モネの問いに、幸次郎は答えを出せるのか。稀代の画家の絵を、手に入れることができるのか。二人の対話の行方を、ぜひ見届けていただければと思います。
モネの作品を求めてフランスの片田舎へやってきた松方幸次郎。果たして遭遇した稀代の画家と、語り合うのは「自分を感動させた作品」、そして「その感動の理由」。
美しいもの、優れたもの、それを見た瞬間、自分の生きる意味を教わった気がする。
そんな経験、僕もあります。僕の場合それは星新一のショートショートでしたし、ある時区民文化センターで見た一枚の絵画でしたし、先輩と一緒に描きあげた一枚の絵、その制作工程だったりします。
美しいもの、優れたものを見た時の感動。
モネは松方に、これを言葉にして説明するよう求めます。それに対する松方の答えは……作品を読んでのお楽しみ。
芸術に志のある人間、芸術に心打たれたことある人間なら必ず感じ入るところ、あると思います。
それに、この期間ですしね。
ぜひ、読んでみてください!
いきなり読者を野郎呼ばわりして失礼しました。ですが今、この短編を読み終えた直後の興奮状態でレビューを書いているので過ぎた表現はご容赦願います。
上野の国立西洋美術館には、「松方コレクション」なる美術収集品の一群が収蔵されています。というかこのコレクションを保存公開するためにこの美術館が建てられました。にもかかわらず、これまで私はさほど「松方」の部分に注意を払わずに展示を見てました。ですがこの短編を読み、矢も楯もたまらず上野に行って西洋美術館詣でをしたくなりました。
話の中核は、「松方コレクション」を作り上げた実業家の松方幸次郎と、説明不要の印象派の画家・モネとの交流です。生まれも育ちも異なる二人に響き合うもの、それを読み解く一枚の絵画。これだけでも十分満ち足りた読後感を得られるというのに、最後に意外な展開が待っています。そして最後の四行を読んでんほぉおおおおお!
もうたまらん、明日は仕事休んで上野行ってくる! 目指すは国立西洋美術館! この傑作短編読んだ野郎共、付いて来い!