事件の関連性

 武田の身辺調査の結果を報告され、驇織タリシキの事件と輓馬バンバへの殺害予告との関連性が深くなったことにより同じ事件だという考え方になった。ただし、武田の事件との関連性は見つかっていないため、違う事件だという扱いになっていた。そのため、佐々木刑事と葛西係長は驇織の事件や輓馬への殺害予告に関する捜査ができないということなのだ。武田の事件への捜査員は驇織の事件の方で取られてしまっており、あまり多くないために佐々木刑事たちはできるだけ早く事件の解決もしくは驇織の方の事件との関連性を見出したいと思っていた。

 佐々木刑事と葛西係長は二人そろって白鳥ホールへと向かった。白鳥ホールでは嘉実が出迎えてくれ、先に来て捜査をした捜査員たちにもしたであろう武田に関する話をたっぷりとした後、ロッカー等の武田に関する場所を立会いの下捜査させることを許した。武田の所持品を集めてある部屋で彼のパソコンを見つけた。そのパソコンにはロックがかかっており、パスワードに関する資料が劇場内に見当たらず見当もつかないということだった。二人はこのパソコンを一度警視庁に持っていき、パソコン内部の情報を解析したいと嘉実に伝えた。嘉実の方はこちらは何にも問題はない、捜査の進展になるのならばできる限り協力したい旨を述べた。佐々木刑事たち二人は武田のものに他に何か重要な物品はないだろうかと調べたが、これといって目ぼしい物品はなかった。嘉実に

「捜査への協力ありがとうございます。」

とマニュアルにありそうな言葉を述べると二人は武田のパソコンを入れた段ボール箱を持ち、劇場を後にした。

 警視庁に戻った二人はすぐさまパソコンの入った段ボール箱を持ってサイバー犯罪対策課に向かった。そこにはパソコンに詳しく、また警視庁内でも一・二を争うパソコンの腕を持っている稲葉貴也イナバタケヤがいた。彼に

「このパソコンを解析してほしいんだ。残念ながらロックが掛かっていてパスワードに結び付きそうな情報がないんだ。できれば早く頼む。」

と葛西係長は彼の肩をたたきながら言った。彼はこくりと首を縦に振ると佐々木刑事の手から段ボール箱を奪い取り、作業に取り掛かった。佐々木刑事はむっとした顔をしたが、

「ここに連絡先と部屋の場所が書いてある。解析が終わったらここに連絡するか、持ってきてくれ。」


と言うとさっさと自らのデスクのある部屋へと戻っていった。葛西係長は慌ててお辞儀をすると佐々木刑事に続いた。

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