ぐっと近づく犯人像

 驇織タリシキの指紋を犯人が悪用した線で捜査が進められている。もう口封じ説はほぼ消えている。今はその指紋をどのように得たかが捜査のキーとなっている。発見された袋の愛用者は輓馬バンバだったことは捜査員の足を止まらせる要因になっている。捜査員たちとしては確実な情報が集まってから輓馬本人に直撃するつもりで捜査をしていた。

 佐々木刑事は他の捜査員とは違って劇場の内部を調べていた。ホール内のゴミ箱から袋が見つかったのだから他にも何かがあるのではないかと、嘉実の許可を得て調査をしているのだ。今佐々木刑事はホール内にある稽古場で事件解決につながる物品を探していた。稽古場にはゴミ箱がないためこれといった証拠品が出てくる確率は少ない。しかしながら劇団員が一番利用する場所なのだ。何かがあってもおかしくない。佐々木刑事は念入りに稽古場の不審なところを探した。床に凹凸がないか、と佐々木刑事が素足になって歩くと凸とした部分があった。その周辺を手で触っていくと、床の一部が剥がれそうなところがあった。佐々木刑事がはがしてみると、中から小分けされたジップロックが出てきた。剥がしたものは紙製のようでジップロックを隠すための手段に見えた。佐々木刑事はそのジップロックに自分の指紋がつかないよう細心の注意を払って持ち合わせていた袋にしまった。

 警視庁に戻った佐々木刑事は葛西係長に経緯を説明すると同時に回収したジップロックを鑑識に回してもらうよう話をした。葛西係長は首を縦に振って鑑識にジップロックを回した。葛西係長はその後佐々木刑事がホールに行っていた間に新しく入った情報を提供した。話が終わったころに鑑識の一人が調査結果を持ってきた。そこには輓馬の指紋が検出された、そう記載されていた。

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