捜査一課長の判断

 木村検視官からの検視結果をもらった佐々木刑事と葛西係長は結果を伝えるべく、そして指示を仰ぐべく輾隹キシトリ捜査一課長のもとへと向かった。捜査一課長室の目の前に着いたところで検視結果の書いてある紙を一枚置いてきてしまったことに葛西係長が気付いた。急いで葛西係長のデスクへと二人は向かった。葛西係長が紙を手に取り、捜査一課長に会おうと再び足を踏み出すと部屋の端に置いてあるファックスが音を立て始めた。ゴォーゴォーと数秒間なると今度はピーピーといいながら紙を吐き出した。佐々木刑事が葛西係長の意図を読み取ってファックスへと近寄って行き、彼が吐き出した数枚の紙を拾い上げた。その数枚の紙には赤い文字だらけの紙、黒い文字だらけの紙、緑の文字だらけの紙、青い文字だらけの紙など様々な色が一色だけ一枚の紙にそれぞれ振り分けられていた。佐々木刑事はその数枚に拾い上げた紙を葛西係長に持って行った。葛西係長はその紙に書かれている文字を見ると顔が青ざめ、口をぎゅっと結んだ。佐々木刑事は何が起こっているのか、よく分からなかったが大変なことが起こっているということだけは分かった。葛西係長はその青ざめた顔が少し赤くなると、無言でその紙を持って輾隹捜査一課長への元へと歩き始めた。

 輾隹捜査一課長のいる捜査一課長室に両方とも無言で歩いていった。捜査一課長室にに着くと佐々木刑事の方がドアをノックし、返答があると佐々木刑事が先に入った。佐々木刑事が一言二言輾隹捜査一課長と話すと葛西係長が検視結果を資料を見せつつ説明した。輾隹捜査一課長は時折口を挟んだが順調に話は進んだ。捜査方針について話された後、葛西係長が口を開き先ほどのファックスの紙を見せた。輾隹捜査一課長はその紙を見ると顔をしかめ、声を発した。

「この事件はただの殺人ではないようだ。警察としてもう被害者を出さないよう被疑者を検挙する。葛西、佐々木の二人は驇織タリシキの事件と武田の事件から何としても被疑者を上げてくれ。」

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