武田の身辺調査の結果と新たな予感

 部屋に三人の捜査員が駆け込んできた。その三人は武田の身辺調査のためにと葛西係長に調べるよう指示を受けた人たちだった。彼らは事件解決へのキーワードを持って帰ってきているはずなのだ。だからこそ葛西係長と佐々木刑事は期待の目で三人の動向を見守っていた。三人は葛西係長のもとに歩いていくと一番年長の捜査員が口を開いて話を始めた。

「武田伸之の身辺調査ということで劇団を中心として調べました。」

その言葉から武田のことが語られ始めた。まず語ったのは一番若い捜査員だった。

「武田伸之の劇団での状況は普通の劇団員とは少し違ったということでした。他の劇団員は驇織タリシキが亡くなったことによって落ち込んでいるようでしたが被害者の武田だけはどちらかと言えば喜んでいるように見えたそうです。だから大半の劇団員は武田が犯人だと思っていたらしいです。」

若い捜査員がそう語ると、葛西係長が何かを聞こうとしていたがそれを一番年長の捜査員が手を葛西係長の口の前に持っていき、喋ることを制した。すると葛西係長は口を閉じ、年が真ん中の捜査員が話を始めた。

「武田のロッカーを渡部嘉実さんの許可を得て調べたところ、ロッカーからこれが出てきました。」

と一枚の写真を背広の胸ポケットから取り出して葛西係長に見せた。その写真にはロッカーが写っており、そのロッカーには自宅にあったものと同じ事件に関する資料が写っていた。佐々木刑事が見ようとするとその捜査員は胸ポケットにしまってしまった。その後、一番年長の捜査員が話し始めた。

「これは武田とは直接の関係はありませんが驇織宛てに殺害予告が来ていたことが分かりました。形式は先日のファックスで送られてきたものと同じようなものでした。今、武田にも同じようなものが来ていないか調査中です。」

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