捜査員の混乱

 輾隹キシトリ捜査一課長に佐々木刑事は武田の事件を説明し、指示を仰いだ後すぐに事件現場の武田の自宅に再び向かった。佐々木刑事は武田の自宅に向かう前にこの一連の事件の概要を確認していた。一つの事件を捜査すれ上でも周辺の事件を知ることも重要なのである。佐々木刑事は確認後急いで武田の自宅へと向かって行った。

 武田の家に佐々木刑事が再び着くと、捜査員の数が少なくなっていた。佐々木刑事は不審に思い、葛西係長を探した。遺体の置いてあった部屋や武田の私物が置いてある部屋等の捜査しなければいけない場所には葛西係長はいなかった。佐々木刑事は近くにいた捜査員に

「すみません。葛西係長はどちらにいらっしゃるかご存知ですか?」

と尋ねた。するとその捜査員はぽかんと大きく口を開けたと思うと開いた口が塞がらないような仕草をした。その後、

「ごめんなさい、ちょっと意外な発言をされたので。」

と言葉を発してから

「葛西さんなら本庁に戻るとかおっしゃって急ぎ足でここから出てっていきましたよ。」

と言った。つまり入れ違いになってしまったというわけだ。今度は佐々木刑事の方が口を大きく開けた。数秒間時が止まったと言えるように沈黙が続いた。時が動き始めたのは佐々木刑事の

「ありがとうございます。」

という一言だった。佐々木刑事はすぐに携帯電話を取り出し、“葛西係長”と書かれた番号に電話を掛けた。発信音がした後、葛西係長が出た。第一声は葛西係長の怒声だった。

「佐々木、お前何処にいるんだ。捜査方針を俺に伝えるためにデスクで待ってろってメールしただろうが。」

そのまま電話は切れてしまった。佐々木刑事がメールを確認すると葛西係長が言っていたメールが一件来ていた。

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