捜査資料

 佐々木刑事と葛西係長は武田の家から押収したものと驇織タリシキの事件の捜査資料を照らし合わせていた。武田の家から押収したものの数が少なく、驇織の事件との関連性を調べるうえでは難易度が高く感じられた。武田伸之は元々家に物が少なく、これといって押収したものがほぼないのだ。しかし一つだけ事件への関与を窺わせる物品があった。それは事件について書かれた資料であり、筆跡が武田のものと一致した。事件について警察には劣るものの相当詳しく書かれていた。劇団員という立場を利用すれば調べることは可能なもののそれにしては少し詳しすぎる。武田伸之という人物には何やら黒い物があると感じさせた。

 葛西係長と佐々木刑事は捜査資料との照らし合わせにより武田には事件へ大きく関係していると感じたために捜査一課長の輾隹キシトリ徹のところへと向かった。輾隹捜査一課長は捜査一課長室にはいなかった。他にいるとすれば刑事部長室や事件について捜査員と話をしているかもしれない。つまり現時点でははっきりと何処にいると分からないのだ。二人はいったん引き上げ、武田がどういう風に事件と関与しているのかを調べるために三人の捜査員に武田の生前のことを調査させることにした。基本的には同じ劇団員からの情報収集をメインに近所の人などから聞くように指示をして彼らは調査に赴いた。それと入れ違いに輾隹捜査一課長が入ってきた。

「話は聞いたぞ。」

葛西係長に向けて輾隹捜査一課長は言った。

「武田が何かありますね。三人を武田の身辺調査ということで捜査させに送り出しました。私たちは武田の死因の結果が出たうえで自殺なのか他殺なのか調査していきます。」

葛西係長がそう言うと輾隹捜査一課長は

「おう。」

と言って部屋を出て行った。

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