第7話 自己紹介と学院の始まり

ゼノンはミオに教えられた通りの道を歩きながらEクラスへと向かう。


(……危なかった……。いつも夢ん中で見てたからついキリルさん達の名前も呼んでしまったけど…気をつけないとな)


夢の中で出てきたアルスの勇者パーティーのうちの2人が彼らなのだ。よく夢の中で会話していた。……基本は悪口を言われ、暴力を振るわれ続けたが。


(それにしても…ミオ……可愛くなってたな…)


先程のミオの姿がチラつく。


夢の中で見た時とは違い、髪はショートになっている。それにより年相応の元気さや明るさがよくわかる。ゼノンの夢の中のミオは髪も長く服装もしっかりとしたものだったので、神聖的なイメージがあった。正しく聖女という感じだ。


はっ!と思い、!頭をブンブンと振り、邪念を払ってクラスの扉の前に立つ。


(違う!違う!!そんなためにここに来たんじゃないって!!)


フゥ〜っ!とひとつ大きな深呼吸をしてから不安と緊張、そして微かな興奮を抱いて扉を開ける。


ガラガラ!バッシャァ!!


不意に水球がゼノンを襲った。


ゼノンは全身がびしょ濡れになり、髪から水滴がピチョリピチョリと滴り落ちる。


「「「「ギャハハハハハ!!!」」」」


その瞬間Eクラスは大きな笑いが飛び交った。


「見たか!?今の!!」「傑作だったな!!」


全員がゼノンを指さして笑う。ゼノンはその場にただたち続けた。


「は、は〜い。席についてくださーい」


すると反対のドアから先生が入ってきた。その言葉をきっかけにゼノンから離れ、全員が席に着く。


先生はびしょ濡れのゼノンを見ても何も言わなかった。いや、知りながら見てすらいなかった。


「何かこの部屋は下民で無加護臭いですね〜」


それどころか煽ってくる。しかし、ゼノンはその挑発に乗ることはなく、自分の席で大人しく席に着く。


「はじめまして…。Eクラス担任のブラムです。よろしく…」


ブラムと名乗った男はここの教師にしては珍しく少し細かった。強さの覇気もあまり感じられない。魔法師団に所属していたようだが、そこでもあまりいい地位ではなかったんだろうとEクラスのみんなは考察していた。



実力に応じてSクラスからEクラスまで割り振られる学院の中で、ここにいるのは最底辺のEクラス。それにふさわしい先生だと思った。


「あ、あはは…。それじゃあ、順番に自己紹介でもしてもらおうかな…?」


ブラムの発案により順番に自己紹介することになった。そして1番最後のゼノンの元へと回ってきた。


が…、


「さて、これで終わりかな?」


ゼノンの1つ前でブラムはそういった。しかし─


「ゼノン=スカーレットです」


ゼノンはおもむろに立ち上がり、自らの名前を名乗る。全員から睨まれることになったが、ゼノンは気にもしていなかった。


ブラムは驚きのあまり、持っていたペンを地面に落としてしまう。


「忘れていたよ……。それで君の名前は……くんだっけ?」


=スカーレットです。よろしく」


「噂通り…傲慢なんですね」


「そりゃどうも」



ゼノンは不敵な笑みを浮かべてブラムを見つめた。


こうしてゼノンの波乱に満ちた学校生活が幕を開ける。

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