第11話 英雄と無加護②
Sideゼノン
「ラルク…!!」
やめろ…逃げろ…そう言いたいがもう声が出なかった。
仮に戦いになったらラルクでは勝てない…それは誰もがわかっていた。
クソっ!!情けねぇ!!なんのための8年だったんだよ!!!!
自分の身ひとつ守ることできねぇのかよ!!
かすれた目で見るラルクはとんでもないほど震えてるし、汗も沢山だ。
立てよ!!俺!!
「それに……友達なんです!」
……!!!ラルク……。
ずっと学校で虐められてきた。お前にも酷いこと言われたよ。
でもその分俺は知ってるよ。お前は周りとは違う。優しいやつだってな。普段は臆病だけど、本当は面白くてやれるやつだってな。
んで、そのラルクがビビりながらも俺を助けてくれてる。何もかもを捨てて友達の俺のために……。
やべぇ…。嬉しい……。初めて友達できた……
なら応えろ!!!その思いに俺が答えろ!!
いつまで寝てるゼノン=スカーレット……!!
俺はなんのために強くなることを決めた!?
なんのために強くなる!!?
『…いつか……私を……』『私は……死に……たく……ない……』『…ゴホッ!!…あり……がと………』
頭の中に夢の記憶がフラッシュバックする。
全部を守る"魔王"になるためだろうがぁ!!!!
その俺がどうして守られてる…?
さっさと…立ち上がれ!
「や…めろ!!」
俺は動かない体を動かし立ち上がりラルクの前に立つ。
足取りはフラフラだし、制服はボロボロで俺の血だらけ。俺自身もきっとひどいんだろうなぁ。あぁ…、アルスにいじめられた時よりひどいなぁ。
「お、お前……もう……」
「友達なら助け合うのは当然だろ?さっきは助かった…。ありがとな!」
「まだ…立ちますか…」
「あ…たり前だ…。俺は…全部"守る"ために生きてるんだからな」
「そうですか……」
ファナ先生が再び剣を構える。クッソ…。こっちは瀕死寸前だって言うのに、全く油断のない構えしやがって。ちょっとくらい手ぇ抜けよ。ワーカーホリックかよ。体罰ごときに本気なんなよ!!
「ラルク……下がってろ……これは俺とあの教師との
俺はラルクを下げる。ここからはどうなるかわからん。俺もあと1回の攻防で確実に動けなくなるからな。それに死突が来たら守れないし。
ファナ先生の構えは間違いなく死突。今回はフェイントじゃねぇだろ。さすがに。
頭の中に夢の記憶が流れてくる。
『ほら!ムスッとしてないで笑って!ゼノン!』
『えー?なんでだよ?』
『だって…』
「笑えよ……
「スキル……」
ファナ先生は剣を地面に水平にして構える。
「じゃねぇと……」
『「明るい未来は来ねぇ(ない)ぞ(から)!!!!!」』
俺は笑いながら真っ直ぐに最高速度で駆け出す!!
いけ!!前へ!!
己の限界を超えて!弱い自分を超えて!!悪夢を乗り越えて!!
最前戦に!!!駆け抜けろぉぉぉ!!
「死突!!」
予想通り先生の技は死突だ。
なら!!!
俺は先生に向かってただ一直線に進む。
間合いを詰めろ!!
そして……今日何度目か知らない砂埃が学院を覆い、宙を舞った。
「「「「キャア!!」」」」
「「「「うわぁ!!」」」」
ゼノンとファナ先生との激突によって起こった衝突は今日1番の衝撃を生んだ。何人かの生徒はそれに耐え着ることが出来ず後ろに転んで後ずさりしてしまう。
「どう…なった……?」
誰かがそう呟いた。そして砂埃が重力に従い、落下する。
そしてEクラスだけでなく、ここに来た生徒、教師全員が緊張の中見守る。見えた景色は……
「お、おぉぉ!!ファナ先生の勝ちだ!!」
「当たり前だろ!?英雄だぜ!!!無加護が勝てるはずねぇ!!無加護がせこいことしても勝てねぇんだよ!!」
「そうだぜ!勇者様でも一撃も与えられなかったんだからよ!」
「あぁ!?」
「ひ、ヒィ!ゆ、勇者様!」
「チッ!確かに俺はファナ先生に負けたが、一撃は与えたぞ!」
「え!?あのファナ先生から!?勇者様すげぇ!!! 」
「はっはっ!当然だろ!」
そこにはゼノンからの返り血を浴びて赤く染まった無傷に見えるファナ先生と反対に自分の血で染まり、地面に倒れ込むゼノンだった。
「ゼ、ゼノン!!」
「ゼノン!!!!」
多くがファナ先生の勝利を称える中、ミオとラルクだけはゼノンの元へ駆け寄る。ミオはすぐにゼノンを癒し始める。
「せ、先生!いくらなんでもやりすぎだろ!!」
しかしファナ先生はラルクの怒りをスルーする。そして足元に落ちた細剣を
「出血量がやばいかも!!スキル:聖なるものの羽衣!!」
これはミオのスキルで一時的に相手を癒す効果を爆発的に上昇させる効果がある聖女専用のスキルだ。
「いや〜、流石ですね!ファナ先生!!」
「すみません、理事長。つい張り切りすぎてしまって」
「いやいやとんでもない!生徒のためのいい演習になりましたよ!!いつも通り無傷の勝利でしたね!」
理事長は笑いながら生徒の元に戻る。ファナ先生もそれに続こうとするが……
「ま……て………」
「「ゼノン!!?」」
その足をゼノンが握っていた。ミオの回復により一時的に意識を取り戻したゼノンにファナ先生も気づくが、振り返ろうとはしなかった。
「……
その言葉を聞いてゼノンは再び意識を落とした。
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