第14話 知識④
「……ちなみに魔王なら『本質』は何だったんですか?」
考えても分からないので同じ血液魔法を持つ魔王についてファナに尋ねて見ることにする。
「…知らないわ」
「…え?」
「『本質』なんて他人に教えるものじゃないわよ。
「え?家族…なんですよね?」
「そんなこと言われても知らないものは知らないわ。お父さんとも殺り合うことはあったんだし」
(えぇ〜……。何その家族…。家族同士で殺り合うのかよ)
ゼノンは、恐ろしい!そう思って考えることを放棄した。
(そりゃ、息子にも裏切られるわ。まぁ人間ゆえの先入観が入ってるからなんとも言えないけど)
吸血鬼は不死身とは言えなくても心臓を潰されない限り死なないというのでは価値観が異なってくるのは必然と言えるだろう。
「一番厄介な本質は『心』に関わってくるものね」
「『心』…?ですか?」
思わず首を傾げてしまう。ゼノンはもっと複雑かつ強力な言葉が出てくると思っていたが、ファナの口から出てきたのはゼノンが想像していたよりもっとありふれた言葉であった。
「えぇ。心は生き物の中でも最も複雑なのよ。未だに名前のない感情だってある。それに自分でさえ理解出来ないんだもの。だから…厄介なの」
「…?よく分かりませんけど、自分でも感情がよく分からないのであればその魔法は発展出来ないんじゃないんですか?」
「普通であれば……ね。たとえば「怒り」という感情が本質の魔法を想像しなさい。そうね…。火属性の方が想像しやすいかしら?そして、目の前で大切な人が殺されるとしましょう。その時、あなたはどう思うかしら?」
その瞬間、ゼノンの体から大量の魔力が発せられる。
それにより、部屋中に魔力の風が荒れ狂い、とんでもない威圧が部屋を支配する。その中でファナだけは堂々とゼノンの前で座る。
「そういうことよ」
「………あぁ……、なるほど………」
これには思わずゼノンも納得してしまう。ゼノンは夢の中で何度も…数え切れないほどに大切な人が死んでいく
仮にゼノンが「怒り」を本質とする火属性の魔法を使えていたならば、その時ほど強力な魔法は放てないだろう。その気にでもなれば世界すら燃やせるような魔法を放ってもおかしくはないとゼノンは思う。
「それだけじゃない。普段から魔法を暴発させる可能性だって高くなるわ。不憫なことに私達は自分でも自分の感情を思うままに制御出来ないのよ……」
「……その通りですね…」
そこでゼノンはあることに気づいた。
「…ミオは大丈夫なんですか?」
ファナはミオの本質は癒す『気持ち』と答えた。つまりは感情、心に起因しているのだ。なら、暴走の可能性は高いということである。
「…今のところは大丈夫でしょう。必ず暴走するというわけでもなければ強い魔法を使える人ほど感情に起因する本質を持っていることが多い傾向にあるから必然と言われれば必然よ。そんなに心配することでもないわ」
「…そう…ですか……。そうならいいんですが」
ファナの言われたことにゼノンは自分を無理矢理納得させる。仮に魔法が暴発したとしてもファナが何とかするだろう。それでも無理なら俺がミオを守る─。それがゼノンの使命だと感じたのだ。
「あとは──そうね、お父様がよく部下に言っていた言葉でも送るわ。"強くなりたいならばカッコイイ男を目指せ"─だそうよ」
「……は?」
ファナから聞かされた憧れの魔王からの言葉に思わずゼノンは疑問を漏らす。
「ち、ちょっと待ってください……。それってつまり……俺もアルスのようなイケメンになれるように……整形しろってことですか?整形しろってことですね?……俺そんなに酷い顔してますかね?」
ゼノンは自分の顔をぺたぺたと触る。近くにある鏡で自分の顔も確認する。
「……お父様の言葉をそんなふうに解釈するのはあなただけでしょうね……」
「わかってますよ。ただのジョークです」
「確かにあなたの顔は中性的で、男らしいアルス=ギュンター君と比べれば私は後者の方が好みではあるけれどそういうことではないわ」
「グハッ!!……し、師匠……こ、言葉は凶器になるんですよ……?知ってます?」
「別にあなたのことは貶していないわ。そっちの方が好みという人もいるでしょう」
「中性的だなんて!カワイイ顔だね☆って言われてるのと同じですよ!?男なら『きゃ〜!!カッコイイ!』って言われたいんですよォォォォ!!!!」
ゼノンは床を怨念に取り憑かれたように叩き、わずかながら血涙を流す。
「気色悪い女声出さないでちょうだい。不愉快よ」
「圧倒的理不尽!!」
「うるさいわね。冗談よ。あなたのジョークに返しただけよ」
「…返しがキツすぎます。いつからジョークを言ってはいけないなんて言うルールになったんですか?危うく天に召されかけましたよ?……ん?」
軽口を叩きたながら、ゼノンの中にある疑問が生まれた。
「師匠…念の為確認です。どこが冗談だったんでしょうか?」
ゼノンの疑念にファナの動きが一瞬固まる。
「…ふふ。決まってるじゃない。『別にあなたのことは貶していないわ』の部分よ」
「一番冗談であって欲しくなかったところじゃねぇえぇか!!!」
ゼノンはより一層激しく泣きじゃくる。
「うぉぉあぁぁぁ!!!」
「ふふ。たかが顔ごときで気にしすぎよ。ふ、ふふ」
「それはその笑いを収めてから言ってください。それと思春期の少年にその答えはNGですよ。マジで」
「お父様が言うには…確か…」
「え?スルー?」
「カッコイイ男っていうのは志のことらしいわ。優しくあり、気高く、時に泥臭く、そして誰かを守れるような…そんな志のことらしいわ。私はよく分からないけど」
魔王からの言葉にゼノンはどこか共感できる。それは同じ男だからか。それとも魔王という共通点からか。はたまた同じ血液魔法を持つからか…。それは分からなかったが。
「女には分からないんですよ……。男である俺にはよく分かります」
「…古い考え方ね。もはや男女は平等よ?」
「そういう意味じゃないですよ。女の子だってカッコイイより可愛いとか綺麗とかの方が嬉しいでしょ?」
「そうね」
「そういう話ですよ…」
「……あなたはどことなくお父様と似てるわ……」
「魔王も中性的な顔立ちだったんですね……。だからさっきの言葉がしっくり来たのか!」
「…顔だけで言うならどちらかと言うよりアルス=ギュンター君よりよ。お父様はあなたの1億倍かっこよかったわ。国中から言い寄られていたもの。結局お母様以外娶らなかったけど」
「ガッデム!!所詮顔か!!」
「やっぱり私の見間違いだったわね」
「はぁ。そうだ、師匠血、いります?」
「え!?頂くわ!」
「冗談ですけど」
その瞬間ファナの顔から感情が抜き落ちる。対してゼノンはイタズラが成功したことで謎の達成感を得ていた。
「これが…いじめっ子をやっつけた時の快感か……」
「
「え?は!?」
しかし、ゼノンが両手をあげたその瞬間に何故かゼノンの体が麻痺したように動かなくなる。
「あら?こんなところに野生の血袋があるじゃない。頂きましょう」
「え?あっ、ちょ、師匠俺が悪かっ……あっアアァァ!!!!」
そして今日もゼノンの絶叫が屋敷に響き渡る。
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