33.魔王の再来
「光魔法に攻撃性はないはずなのですが、これ普通にダメージが発生してませんか!?」
「していますね……継続的なダメージを感じます」
光魔法を担当している煌びやかな女教師、キャスリーン女史はもうドン引きするかのように後ずさりしながら、私の魔法に恐れおののいている
私もこの魔法から逃げたいので気持ちは共通していると言えた。
仲間ですよキャスリーン女史。
手に杖を持っているだけで瘴気が当たって普通に痛いのです。
「とにかく、今すぐその闇玉を収めてください!」
「は、はい! よいしょ!」
「握り潰しましたか今!?」
グシャっと闇を握り潰す私の姿に驚愕するキャスリーン女史。
しまった! あまり淑女らしくない方法だった!
『淑女以前の問題だよ!』
しかし、そうは言っても一度生み出したものを消すのは結構難しいことなので、光魔法初心者な私が……光魔法? 闇魔法? いや、まあ、光魔法を消すには力づくが一番手っ取り早かったのだ……。
我ながら脳筋が過ぎたが。
「……貴女はもしかすると光魔法を習得するのが、人一倍大変かもしれませんね」
「……だと思いました!!!!」
動物魔法に続き光魔法でも前途多難すぎる私だった。
ち、ちくしょう……!
★
その後も花魔法では禍々しい食虫植物ならぬ食草植物を生み出し他の生徒の花を食べそうになったり、占いでは世界の滅びを予言したりして大目玉を食らった私は、割と普通に落ち込みつつ、次の意授業の為にグラウンドへ移動する。
こ、ここまで駄目駄目生徒だとは……。
『さすがかつて師匠に戦う以外は何も出来ないと評されただけはあるよ』
師匠とは私を孤児院から引き取り、兵士として訓練した男のことでそういえばあの人はそんなことを言っていた気がする。
そのたびにそんなわけないと思っていたのだが……まさか全面的に正しかったとは。
何故、綺麗なお花を咲かせる訓練を受けさせてくれなかったのです! 師匠!
『兵士に不必要すぎるでしょ』
悲しいかな、私の魔力の方向性は攻撃に寄っているらしく、優しい魔法は使えないらしい。
だからと言って、自分に合った授業を選んでいてはまた戦場に逆戻り……どうしたものか。
『丁度次の授業、決闘術だね』
決闘術……それはかつて魔法使い同士で行われた戦いの形式を習うものであり、同時に護身術的魔法を習うものでもある。
要するにモロに戦闘用授業というわけで、今は受けたくない気持ちでいっぱいだ。
やってきたグラウンドにはもう生徒が大勢集まっている。
今までの授業と違い必修なので人が多いのは当然だが、それでも初回三枠に分けられているはずの授業でこの人数は相当だ。丁度この時間に空いている生徒が多かったのかもしれない。
当たりを見渡してみると見知った顔もある。
アリスとケットルだ。2人で仲良さそうに……いや、言うほど親しげな雰囲気ではないが、とにかく雑談に勤しんでいる様子だ。
私も混ぜて貰わなくては!
「アリスー! ケットルー!」
「あっ、セピア! 聞いて、今そこでケットルに聞いてたんだけど、凄い生徒がいるらしいのよ」
「凄い生徒?」
「せや、何でも謎の暗黒物質を生み出し植物型の魔物を操って世界の終わりを告げようとしとる魔王みたいやつがうちの学園にはいるらしいで」
「へ、へー……怖い人がいるんですねぇ……」
何とか平静を保つ私だが、明らかにそれはセピア・ミーティアムの不祥事に間違いなかった。
それぞれの授業の失敗が合わさって、なんだか大変なことになっている!
『一体何ビアなんだろうなぁ』
くっ、私の剣が嫌味たらしい!
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