Ⅱ-5 5月にセーター

「ちょっと大きすぎるかな」

「そうかな、これぐらいが楽でいいよ。家でくつろぐときは」

「でも何か履いたほうがいいよ」

「別にいいじゃん、お兄しかいないんだし。ちょうど裾のところがすぼまってるし」

「暑くない、五月にセーター」

「それがちょうどいいんだなあ」

「やっぱり天然の素材っていいよね。体にやさしい感じがする」

「ねえ、これどこで買ったの。どう考えてもお兄のセンスじゃないよね」

「もらったんだよ、ある人に」

「へえ、そんな人いるんだ。でもいいの、あたしが着ちゃって」

「なんかしっくりこなくて。ちょっときついし」

「でも、せっかくくれたのに」

「それよりお前、最近よくひとりで出かけるけどどこ行ってるの」

「気になる」

「別にいいんだけどさ」

「そうだよ。お兄はお兄。あたしはあたし」

「このクッキーも手作りだよね」

「ちゃんと売ってるやつだよ」

「このシールの貼ってあるお店」

「ねえ、誰と行ったの」

「たまたま通りかかっただけだよ」

「それじゃ今度あたしも連れてって」

「今日はスーパー行かなくていいのか」

「なんか行きそびれちゃったね」

「こんなにくつろいじゃったし、ピザでもとろうか」

「それもいいけど、ほかに買い物とかないの」

「いいよ。後で書き出しておくからお兄行ってきて。明日でいいから」

「かまわないけどさ」

「ねえ、お昼のカルボナーラうまくできたでしょ」

「今度はピザもあたしが作るから、今日は宅配でいいよね」

「ビール飲むの」

「もちろん」

「ビールは宅配してくれないよ」

「えーっ、もうないの。飲んじゃった」

「お前しか飲まないよ」

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