第十九話 渡る世間は
「おっりゃぁぁああぁあぁぁあっ!!」
「————
「ここが大会の練習場って奴ですか?」
「暫定的にはそうだ、常連が適当な空き地使ってるだけで非公式だけどな。」
(何かSASUKEみたいだな…)
練習場には様々な人間が鍛錬に励んでいる。……いや、正確には動物と人間を混ぜた様な人間(?)も隅で練習していた。
この手の大会は普通筋肉モリモリマッチョマンの変態ばかりが出るイメージを勝手に持っていたが、この場にはそんなタイプの人間ばかりではなく、かなり高齢な老人や、女性、小学生ぐらいの男子もいる。
魔法によって年齢や種族、性別が関係なくなっているのだ。
「おい、見ねー顔だな! 新入りか!」
分析の真似事をしていたら、突然甲高い少年の声に呼び止められる。あの小学生っぽい男子だ。
「えぇ、まあ」
「俺はソラ! ソラ・バスター! ゲキド剣士道場から出てんだよ! 宜しくな!」
「…どうも」
何でこいついきなりご丁寧に自己紹介してんだ? ひょっとして俺も自己紹介するべきなのか?
「ジェーン・ビィです。冒険者の
「ぼっ、冒険者ァッ!?」
冒険者と聞いた瞬間、少年はオーバーリアクションでのけぞる。なんなんだコイツ……。
「ぼ、冒険者なら腕っぷしはあるよな!良かったらウチの道場見に行かねーか?!」
「遠慮します」
「ま、待て!ウチはいろいろ自由だし、職業とかみんな気にしないって──」
「ソラァァァッ!!」
「ぐげっ!?」
「もう、またすぐそうやって勧誘して! 悪評が広がるでしょっ」
目の前にあった少年の顔の輪郭ががまるでブローノ・ブチャラティの様に歪み、直後体ごと吹っ飛ばされていったのだ。
「うっせ! これは俺の話なんだからユウリ姉には関係ないだろ!」
「えっ、ドロップキック?」
あまりにも唐突だった出来事に、俺はまるで花火の遅れてやってくる音の様な反応をかましてしまった。
そう、要するに彼はいきなりやってきた少女にドロップキックをかまされてぶっ飛ばされたのだ。
「ごめんなさい、急に話しかけられてびっくりしましたよねっ! 私、ユウリって言います。」
「あ…どうも」
「どこの道場なのかはあの子からも聞いてますよね……本当すみません。」
「率直な疑問なんですけど……あれ何なんですか?」
「実は、道場に紹介したら国からお金が貰えるんです……それでああやって、なりふり構わず紹介しようとしてるんです。」
「でも何か様子が変で……お師匠様に教えられた特別な仕事だ、って言って何にも教えてくれないです。」
「何度も止めても止めても聞かないし……。」
「そうか……」
すごく……どうでもいいな……。
自分も他人も生死に関わらないし、そんなよくわからない話をされてもな……ちょっと困るな……。
ていうか国から金貰えるって何……?あっ、そういえば俺10万円申請してなかったな……
……こういうやつってアニメとかドラマの主人公とかだったら「よす!オイラが力貸すでヤンス!」みたいになるんだろうけど、
ぶっちゃけ“いや関係ないし。だいたい個人個人の問題に首突っ込むのは逆にアレじゃない?内政干渉じゃない?”っていう意見が脳内で勝ってくるな……。
「すいませーん!そこのお兄さんちょっといいですか?」
「クソガキも話一ピコも聞いてねぇしな……」
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