閑話 錆びれた情緒 Side “ホフマン“

─Side ホフマン

“ホフマン”は目の前にいる少年の要求を、ただ若干面倒そうに聞いていた。


「俺も…あのデッケー鎌使わせてくれ!」


いきなりあの2人が使い出した代物の使い方なんて、分かるわけが無いだろうに……。


少年の名はソラ・バスター。ここから少し離れた剣士道場の息子だ。


剣士道場とは言っても。 誰かと戦うための技術というより、

自分自身を鍛えるための趣味として剣を振るう人間が殆どである。


運動不足を解消したいから、剣を振るう事が何となくかっこいいから、或いは単なる習い事として……。



そんな理由でアマチュア剣士として道場に通う。だがそれ以外にも理由が無い事は無い。


魔法の幅を広げる為に、魔法士が剣と魔法を組み合わせた“魔剣法”を模索する事がある。


普通魔法と剣術は別と分けられる事が多いが、それらを組み合わせる事でまた違った攻撃ができるのだ。


魔法と既存の技術を組み合わせる事によって、相乗効果が生まれ凄まじい結果を叩き出す事がある……。


……そうだ。


「ああ、わかった、鎌作るよ。でもお前も手伝えよ!」「わかった!」


————


「あいつらみたいに……特にムトーみたいなやり方を完璧に教えるのは正直無理だ……でもな、それと同じぐらい草を刈れるやり方を教える事は出来る。」


あいつらがやっている草の刈り方に、魔法による斬撃を加えてやれば、もっと刈れる筈だ。


————


人にモノを教えるなんて……何年やってなかったのだろうか。


「————— 研磨ポリッシュ。」


鎌刃を磨くための魔法を詠唱する中で、そんな事を思う。


錆びていないまっさらな鉄は、まだ希望があって若い彼らの様に見えた。


俺はもう————。


取り返しのつかない錆。磨いても磨いても落ちない、一生かけても消えない錆。


『その錆に塗れて生きて、苦しんで死ぬ事をお祈りします』


苦痛と悲しみと、憤怒の表情が混ざった壮年の男の顔が、フと脳裏に浮かんだ。


寂れて空虚な感情が、心に染み渡っていった。

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集団転移してクラスメイト全員SSS級ランクのスキルと使い魔ゲット!オレだけゴミステータスでなんか追放されたけど特に問題はない〜全部実力でねじ伏せるので〜 上本利猿 @ArthurFleck

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