第二十一話 農業ギルドの闇
「何だ何だ? 君あの人たちに何の遺恨があんの?」
「あいつら……俺たちの道場を潰してこの辺の土地を全部農地にするつもりなんだよ!戦用食糧確保のためだとか言ってよ!」
「なるほど…ここら一帯をでかい農地にして作物を売りさばくって事か……」
「プランテーションって事か?」
よくわかっていないバカが口を挟む。
「プランテーションじゃ無い、あれは一個の作物を育てる手法だ。戦用食糧なんて言ってたんだぞ? 多分小麦だけじゃない、野菜とか色々育てる複合農地にでもするんだろ。なんなら牧場だってこさえるかもしれない。」
「よく知ってんだな……」
「ただの素人の考えだよ、鵜呑みにするな。」
「それで、あいつらにこの大会出ろって脅されて……ベスト3に入らなかったら道場を畳んでもらうって」
「ちょっと待て、どうして草刈り大会で好成績残せなかったら道場が潰れることになるんだ? おかしいだろそれ」
「農業に貢献も出来ない奴に土地を持つ資格はないって事か……」
「そういうことか……でもよ、剣士なんだろ? 農業とじゃあお門違いだろ。それに戦争してんだしよ!」
「戦争に行くような剣士は大抵志願したりして朝義勇隊で修行するんだよ。俺たちの道場は趣味でやってる人が殆どだ。」
「これから戦争ももっと激しくなるらしいし、こういう無駄のある奴は切り捨てるってゴードンも言ってたんだよ。」
「だからわざわざ大会に出させて笑い者にするつもり、か。お門違いなんて関係ないし、不要な愚か者であるかの様にわざと流れを持っていく。まあ、考えてあるな。」
「どうせお前、自分が持ってる剣と魔法で無理やり草刈りするつもりだったんだろ?」
「ぐ……うん、そうだよ。道場で育てられたから、鎌とかも家に無かったし……」
「草刈りに使う鎌を買おうにも、農具屋にはギルドの息がかかってるからロクに買い物もできやしない。そんな所だろ? 」
「そこまでやるか普通……?」
「バカでかい農場作るために道場潰そうとする奴だ、これぐらいは朝飯前なんじゃないか?」
ただ俺が疑問なのは、なぜそんなことまでする奴らが「農業振興センター」なる団体が開催しているであろう大会に参加しているかだ。
普通に考えたら農業ギルドが主催するのが自然だ。ギルドが主催すれば不正だってやりたい放題だしな。それともあのセンター自体もギルドの息がかかった、ヤクザで言うならばフロント団体みたいなものなのか…? だとしたら何故そんな回りくどい事をするんだ……?
……いや、余計な事は考えるのはやめよう。どうせ忖度や陰謀に塗れたつまらない事実しかないだけだ。
「所で、ここに来たって事はお前たちも大会に出るのか?」
「たち……? いや、俺だけだけど?」
「どっちでもいい!頼む、鎌貸してくれ!」
ソラは叫びながら頭を凄まじい勢いで下げる。
「それくらいなら全然いいぞ!」
「えっお前ちょっと」
「やった!」
くそ、強引に決めやがって!しかし鎌か…まあどうせホフマンの家にあるだろう。怪猫の時だって変な首輪20個位置いてたぐらいだし、鎌ならもっと置いてそうだ。
———
「馬鹿、知らねぇ奴を車に乗せれる訳無ぇだろ!」
「えっ! 何でですか! 」
「何でもクソも無ぇよ! ああもう、ホラッ! せめてソイツの目隠せ!」
何故かホフマンは自分の頭を極端まで下げ、まるで衆人からそれを隠すようにしている。
「こんな人が多いのはまずいだろ……!」
まるで自分の存在を、俺たち以外には認知されてほしくなさそうに。
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