第二十二話 DASH
一悶着あった後、俺達は何とか冒険者のギルドにたどり着くことができた。
「これいつまで着けてればいいんだよ!」
「うるせえ、ほらよ。」
騒ぐソラを軽くあしらいながら、ホフマンは鎌を取り出してきた。
ただの手鎌を。
「えっ。ちっさ」
「どうすんだよ烏丸……大鎌でやるとか言ってたよなぁ…! こんなのじゃトーマスとゴードンに勝てっこないぞ…!?」
「じゃあ作るか」「は?」 「作るって言ってんだよ。 一から」
「お前な……!」
「鉄腕DASHじゃねーんだぞこの小説はよおおおおおおおおお!!!!!!」
————
「え、いやお前まじで作るの……?」
「当たり前だろ。勝てっこないんだろ? なら作るしかない。」
「……どうやって?」
まずは柄の部分から作ろう。長さ170cm程度で、上端と中央部分に持ち手の部分を取り付ける。
「…材質は?」「木材。木ならいくらでもあるしな。」
ホフマンの倉庫から長めの木材やのこぎりを取り出し、持ち手や柄のサイズにカットする。
「のこぎり使うなんて中学以来だな……。」
「急ぎ目で切ってくれよ。大会まで……いつだ大会?」
「あと一ヶ月ぐらい!」
いつの間にかソラの目隠しが外れ、何故かホフマンが変な仮面を被っていた。
なんでそんなに顔を隠したがるんだ……?
「よし、ざっとこんなもんでしょ」
のこぎりの作業は慣れていたので思っていたより早めに切り出しが終わった。
それから少し経って、烏丸も2本目の柄を……2本目?
「なんでお前2本目作ってんだよ!」
「そんなの決まってるだろ。俺も出るんだよ大会に!」
「なんでだよ!?」
「万が一お前が優勝したら嫌だからな!」
ああ……そういえばコイツ俺との勝ち負けにやたら拘ってたっけ…。
「そんな出る、つったってすぐには無理だろ。用紙も要るし、飛び入り参加とか無理なんじゃないか? まあ、丁度良くライチが来たら話は別だけどさ。」
そう言った瞬間突然ドアのノックが響く。
「すいませーん! ライチでーす! 開けてもらえません?」
「嘘でしょ?」 「話が別になったな」
————
「用件はなんだ。」
「大会の詳しい要項が決まったので、お伝えしようと……」
「じゃああいつらに言ってやれ。」
「彼以外にも出場するんですか?」
「はい、俺出ます!」「じゃあ……まだ用紙余ってたんでどうぞ。」
素早く用紙に必要事項を書いた烏丸。これで彼も出場することになったのだ。
「所で…何されてるんですか? それ」
「鎌を作ってたんですよ。まだ柄だけですけど。」
「今時鎌ですか……古風ですね。」「えっ、みんな鎌使わないんですか?」
「最近の出場者、特に
「そんなに力入れるんだな……。」
「そりゃこの大会は大多数は農業ギルドの老若男女の農業従事者で、それ以外も義勇隊OBか、その辺の力試しでトーシロが出るぐらいですからね。 小さい大会とはいえ、プロが負けるようじゃ廃業ですよ。」
「ストイックなんですね……あっそうだ。お茶出しますよ、ゆっくりしてってください。」
「いや、そんな」「どうせなら出来た鎌見て欲しいし。見るだけでいいですよ。」
「え、でも…!」
「冒険者を演出に利用したいんですよね? それで僕たちがポンコツだったらライチさん、
責任問題問われるんじゃないですか?」
「“あのクソコンビを呼んだのは誰だ”って。」
「分かりましたよ……。」
「じゃあなんか持ってくるんで。」
————
「肝心なのは刃だよな……どうやって作るんだ?」
「鉄ぐらいあるでしょ。それを鎌の形に切り出して、紙がスパって切れるまでひたすら研ぐ!」
「鉄をどうやって加工するんだよ……機械とかいるだろ普通。」
「「………ホフマンさんの魔法?」」
「結局俺かァ!」
ホフマンの倉庫をから板の鋼材を数個持ち出し、鎌の形で切れる様に俺と烏丸でペンに印をつける。
「珍しいなウガン、お前利き手逆か。」
「え? 僕右利きですけど?」
「いや、そこが珍しいんだろ。普通みんな左利きだぞ?」
ペンを走らせ会話のラリーを続けながら、俺たちは鎌の形を書き終えた。
この世界では左利きが一般的に多いらしい。確かに良く見てみれば農具も武器も何もかも左利きに使いやすい様に作られていた気がする。
「よし、切るぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます