閑話 強大なる力 Side 2-A

「……サあ、続ケよう。」


無様に引きづられていった烏丸たちを放置して、朝皇は保護魔の召喚を始めた。


じっと目を閉じ、彼は“言葉”を紡ぎゆく事に専念する。



『授かりし 命 乱れ 有難し 叡智 ここに あまねく ばかり』


なんじ 今 欠け落ちる刻 鳴く キミを ならば さむらい ことわり 示せ 』


その刹那、鼓膜を劈くような高音が響きが完了した。



この場にいる誰もが目にした光景。


それは、元の世界では存在すらあり得ない生物たちがいた事だった。


「うぉっ…なんだこれ!?」


「ドラゴンでっけぇ…」


「三つじゃなく二つの頭……?」


「えー!?このスライムかわいい!」


「「「……えっ」」」


「「「なんだこいつ……?」」」


現れた“それら”に口々に反応するクラスメイトたち。


体育倉庫ぐらいの大きさで、常に体のどこかが燃えているドラゴン、それよりも大きく、虹色に輝くゲーミングスライム、二つの頭を持つ青と白の混毛のオオカミ。


三つ以外にも、クラスメイト一人一人、遂になるように保護魔は召喚されていた。


それぞれの保護魔たちは、定められた“主”に引き寄せられるように近づいていった。


燃えるドラゴンには女子バレー部のキャプテン、西銘ニシメあきら。


ベリーショートカットがチャームポイントの彼女だが、それ以上に目を引くのが、そのカリスマ性。


彼女を口を開けば皆が賛同して行動する、リーダーにぴったりな性格。


そして烏丸と違って傲慢さを感じさせない、親しみやすさと優しさを兼ね備えた女の子。


戦士としてクラスメイトを引っ張る存在にもなりそうだ。


「あなたが私の保護魔?すっごいかっこいい!」


双頭のオオカミには、西銘とは対照的に文化部で、文芸部の東 薫。


性格も正反対で、できる限り単独行動を好む職人気質の男の子で、


黒がかった茶髪で地味な外見だけど、かなり整った顔を持っていて隠れファンクラブもあるらしい。


「ファンクラブなんて噂だ。」


ゲーミングスライムに体を埋めていたESports部の岩田 光実は、パッと見女子高生に見えるほど中性的な容姿をしており、自由気ままなムードメーカー。


フワフワな言動と雰囲気で戦争で荒れていく皆の事を癒してくれるだろう。


「うぼぼぼぼ……♪」


他にも様々な保護魔がクラスメイトたちが選ばれていく中、


もはや「チートの女神」と呼ばれている杉沢百合の保護魔を見て、


俺は、広中龍太郎は驚愕してしまっていた。


この高さ100m程はあろう聖堂の半分の空間を、彼女の保護魔、フェニックスが占領していたのだから。


「こんなのありかよ…!」





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