閑話 貴方は誰? Side 2-A
全員の保護魔がそれぞれの人間とペアになり、
転移一日目のイベントはあらかた終わりを迎えたようだった。
『使イの者を寄越す。キミたちハこコで待ってオくように.』
そう言って朝皇は何処かに文字通り消えてしまった。
何だか…朝皇の妙にカタコトというか、少しおかしな喋り方が引っかかる。
外見も60歳、いや70歳以上に見えるし……ま、歳のせいか?
「龍太郎! さっきのあれ、ボクに出来るかな!?」
背後からあきらが突然喋りかけてくる。
顔との距離を数センチ程度まで近づけてまで質問する辺り、あきらはどうやら興味津々らしい。
「そんなの、“板”見ねーとわかんねっての。」
鼻息を荒くし、「気になるなーッ!」と叫ぶ彼女を横目に、俺はなんとなく消しゴムを取り出した。
(試す価値はあるよな…?)
そんなことを考えながら、俺はどこに当てるか探す。
キャッチが綺麗に出来るなら、投げてどこかに当てるのも、それこそ球速とかも超人的ななのか?
ふと思った、この野球部員である広中ならではの疑問を、朝皇が何処かに消えているこの暇な時間に実験してみたかったのだ。
バレー部首相のあきらも似た様なことを考えているのだろう。
自分の力を試してみたい。その子供じみた欲求は俺やあきらだけでなく、
この13……いや、11人全員に当てはまることかもしれない。
遠く先にある蝋燭にマトを定め、全力で振りかぶって投げる。
投げられた消しゴムはその手から離れ、その猪突猛進と言うほか無い凄まじい勢いで甲高い音を立てながら、空気を両断しながら進む。
筈だった。
横隔膜にまで響く重低かつ不協和音。自然界ではまず出せないであろうその不快音と共に、
さっきまで聖堂の端の遠くの方にいたサッカー部の井口が、消しゴムをキャッチしながら現れた。
それはさながら瞬間移動の様だったが、明らかにワープの類いではない。
ちょうど消しゴムが掌から離れ、井口が目の前に現れたその瞬間。
俺は今まで感じたことのない様な爆風を感じたのだ。
普通の強風が傘が変形し破損する程度ならば、
この風は最早上部の布も中の棒も消し飛んで取手ぐらいしか残らないレベルだ。
この爆風を生み出すほどのスピードで、彼はシンプルに走って近づいた。
「……悪く無いな」
(もうドラゴンボールに出てくるレベルだろっ!)
そんな超自然的な出来事に、俺は自分のした事を一度棚に上げて驚愕してしまっていた。
あんぐり開けたその間抜けな口を、閉じる事すら忘れて。
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