第14話:4日目(前編)

おはようございます!ユウナ・アスファルトです。現在私たちはとある土地で休息を取っていますが私の気分が晴れなかった。昨日は夢枕にマリー様は現れませんでした


【ユウナ・アスファルト】

「はぁ~。」


私は溜め息をつきました。マリー様はいつになったら現れるのか。私はマリー様が見せてくれたあの映像を全て見たわけではない。マリー様はこの先を見せたくなかった。それ以来、若干だがマリー様に疑いを持つようになった。マリー様は救国の聖女として歴史に名を残すが本当なのだろうか?信じていいのだろうか?私の中でマリー様への疑念がつきなかった


【ユウナ・アスファルト】

「はぁ~。」


【アガサ・ドリトン】

「溜め息などついて、何か悩み事ですかな、聖女様?」


そこへアガサさんが声をかけてきた


【ユウナ・アスファルト】

「いいえ、大丈夫ですよ。私はこの通り元気です!」


【アガサ・ドリトン】

「もしかして救国の聖女様の事で悩んでいるのではありませんか?」


【ユウナ・アスファルト】

「あぁ、はい。」


【アガサ・ドリトン】

「聖女様、隣よろしいですかな?」


【ユウナ・アスファルト】

「はい、どうぞ。」


【アガサ・ドリトン】

「では失礼します。」


アガサさんは私の許可を得て隣に座った


【アガサ・ドリトン】

「ユウナ様が悩んでいるのは救国の聖女様と邪神との関係についてですかな?」


【ユウナ・アスファルト】

「はい、夢枕にマリー様が現れたら聞こうと思ったのですが、昨日は現れませんでした。」


【アガサ・ドリトン】

「失礼ながらお尋ねいたしますが、聖女様は救国の聖女様を信じておられますか?」


【ユウナ・アスファルト】

「それは・・・」


アガサさんの質問に私は答えられなかった


【アガサ・ドリトン】

「それはそうでしょうな。本人からしたら他者から疑いの目を向けられたら心を開きませんからな。」


【ユウナ・アスファルト】

「でも・・・」


【アガサ・ドリトン】

「聖女様に1つ質問です。社会に出た上で大事なものは何ですかな?」


【ユウナ・アスファルト】

「大事なものですか?」


【アガサ・ドリトン】

「えぇ、何ですかな?」


【ユウナ・アスファルト】

「分かりません。」


【アガサ・ドリトン】

「それは信頼です。」


【ユウナ・アスファルト】

「信頼、ですか?」


【アガサ・ドリトン】

「えぇ、仕事をする上にも家庭を築く上にも大事なのは信頼です。信頼があれば、この人に仕事を預けられる、この人に家を任せられる、この人に全てを任せられる、それが信頼です。信頼が無ければ疑いの心が生まれて、やがては破滅の道へ向かいます。」


【ユウナ・アスファルト】

「それはそうですが。」


【アガサ・ドリトン】

「現時点で私たちは貴方を信頼し、命を預け貴方も私たちを信頼し命を預けています。救国の聖女様も貴方を信頼して世界の命運を託しているのですから。」


【ユウナ・アスファルト】

「私はこんな大事な事をいつの間にか見失っていたんですね。」


【アガサ・ドリトン】

「聖女様はまだお若い。人間誰だって失敗することがあります。救国の聖女様も人間です。誰にだって悩みや迷いがございます。救国の聖女にも何かしらの事情があったのでしょう。今の聖女のようにね。」


【ユウナ・アスファルト】

「私は焦りすぎたのかもしれませんね。」


【アガサ・ドリトン】

「聖女様、信じましょう。救国の聖女様の事を。」


【ユウナ・アスファルト】

「はい!」


私の中でマリー様の疑念が消えた瞬間だった


【ユウナ・アスファルト】

「そういえば前々から聞きたかったんですが、アガサさんはご家族はいらしゃっるのですか?」


私は前々からアガサさんに聞いてみたかった。他の三人は聖女時代からの友人ですが、この人のことはよく知らなかった


【アガサ・ドリトン】

「私には妻がいましたが病で亡くなりました。子供はおりません。欲しかったのですが流産して以来、子供ができませんでした。」


【ユウナ・アスファルト】

「そうなんですか!ごめんなさい。」


【アガサ・ドリトン】

「いいえ、聖女様が気にされることはありませんよ。」


そういいながら、懐から小さな壺を取り出しました。


【ユウナ・アスファルト】

「それは何ですか?」


【アガサ・ドリトン】

「はい、私の妻、ホリーの骨壺です。」


【ユウナ・アスファルト】

「奥様の骨壺ですか。」


【アガサ・ドリトン】

「えぇ、私と妻は、ある夢がありました。」


【ユウナ・アスファルト】

「夢ですか?」


【アガサ・ドリトン】

「えぇ、いつか二人で空の旅に出ることです。私は空を飛ぶ乗り物を作って妻と一緒に大空の旅をしようという夢です。」


【ユウナ・アスファルト】

「そうなんですか!」


【アガサ・ドリトン】

「でも叶いませんでした。妻は病に倒れ、この世を去りました。それでも死ぬ間際に妻と新たな約束をしました。たとえ骨になっても一緒に大空へ行こうと。」


【ユウナ・アスファルト】

「夢が叶ったではありませんか!」


【アガサ・ドリトン】

「えぇ、変わり者の私を信頼し、支えてくれた妻にしてやれることは空を飛ぶ乗り物を作り、一緒に大空を自由に飛ぶことが叶いました。もう私はこの世に思い残すことはありません。」


【ユウナ・アスファルト】

「そんなこと言わないでください!アガサさん、せっかく魔力飛行船が完成してこうして大空を飛んでいるのですから、世界中をホリーさんと一緒に旅をしてください!」


【アガサ・ドリトン】

「世界中を旅をするか、面白いですな。ありがとうございます。聖女様、私に生きる望みを与えてくれました。」


【ユウナ・アスファルト】

「いいえ、私もアガサさんのおかげで悩みも吹き飛びました。それとアガサさん、私はユウナ・アスファルトです。いつまでも聖女様なんて、もう仲間ではありませんか!」


【アガサ・ドリトン】

「仲間ですか、そうですな、分かりました。ユウナ様、このアガサが邪神の谷までお送りいたします。」


【ユウナ・アスファルト】

「はい!ありがと・・・」


あれ、急に目眩が・・・ドサッ


【アガサ・ドリトン】

「ユウナ様、ユウナ様!どうしたのですか!ユウナ様!」


アガサさんの声が聞こえつつ、私はそのまま意識を失った


【ユウナ・アスファルト】

「んん、ここはどこ?」


目を覚ますと辺り一面、真っ白な景色ばかりだった


【ユウナ・アスファルト】

「なんで私、目眩なんか起こしたんだろう?」


【マリー・ブライド】

「私が貴方を呼んだからです。」


【ユウナ・アスファルト】

「マリー様!」


振り向くと、そこにはマリー様が立っていた


【ユウナ・アスファルト】

「あのマリー様、そのごめんなさい!私、マリー様を疑うような真似をして・・・」


【マリー・ブランド】

「いいえ、貴方にちゃんと伝えきれなかった私の責任よ。私も心のどこかで迷いを生じていたわ。それに貴方を試すような真似をしてしまったわ。本当にごめんなさい。」


私とマリー様は互いに謝罪し合う状態になってしまった


【マリー・ブランド】

「知りたかったのよね?私とパイソンの事を?」


【ユウナ・アスファルト】

「はい!」


【マリー・ブランド】

「まず結論から言うわ。」


【ユウナ・アスファルト】

「ごくん。」


【マリー・ブランド】

「私とパイソンは・・・・・血の繋がった兄妹よ。」





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