第15話:4日目(後編)

※残酷な描写あり


【マリー・ブライド】

「私とパイソンは・・・・・血の繋がった兄妹よ。」


こんにちは、ユウナ・アスファルトです。今、私はとんでもない真実を知ってしまいました


【ユウナ・アスファルト】

「マリー様とパイソンが兄妹!」


【マリー・ブライド】

「そうよ。私とパイソンは、とある田舎町に生まれたの。両親は兄であるパイソンが15歳、私が10歳の時に亡くなって、私たちは協力して生活していたの。パイソンは強く心優しく自慢の兄だったわ。」


【ユウナ・アスファルト】

「そうだったんですか。」


【マリー・ブライド】

「えぇ、しかし別れは突然来たわ。私が13歳の時に神託によって聖女に選ばれたの。兄は私が聖女に選ばれたことを喜んでくれたわ。でも同時に離れ離れになるということもあって兄は隠れて泣いていたわ。私も大好きな兄と離れ離れになるのは辛くて私も泣いたわ。」


マリー様がパイソンの話をすると浮かない顔をしていたの、そういう事だったのか


【マリー・ブライド】

「その後、私は12年間、聖女として頑張ってきたわ。風の噂で兄も戦士として勇名を馳せて、やがて辺境に住む独立領主のバルキーニ家の婿養子になり、そのままバルキーニ家の領主になったと聞いたわ。」


私はマリー様とパイソンのそれぞれの道を歩んでいったのね。かたや聖女、かたや辺境の独立領主に・・・・


【マリー・ブライド】

「でもパイソンが領主になったとたんに周辺地域を攻め始めたわ。」


【ユウナ・アスファルト】

「それはどうしてですか?」


【マリー・ブライド】

「当時のバルキーニ家は独立領主として活動していて、金や銀等の鉱石も豊富だったそうよ。その鉱石に目をつけた他の豪族から領地を狙われ続けたわ。そのために前領主は勇名を馳せたパイソンを婿養子にしたわ。地方豪族と対抗するためにね。パイソンが領主に就任した後に、周辺地域を制圧し、豪族たちを滅ぼしたわ。でも、あまりにもやり過ぎたわ。」


【ユウナ・アスファルト】

「やり過ぎたとは、どういうことですか?」


【マリー・ブライド】

「兄は豪族たちを滅ぼす際に、豪族の血筋をことごとく根絶やしにしたわ、相手が女子供でも容赦なく殺したわ。」


私はマリー様が見せてくれた映像でパイソンが、【敵は一人残らず殺せ!】と言ったのか理解した。婿養子に入ったバルキーニ家の当時の過酷な環境がパイソンを冷酷で獰猛な戦士へと変えてしまったのだと。もはやかつての優しい兄の面影が無くなってしまったことを・・・


【マリー・ブライド】

「それで豪族の生き残りが王国に訴えたの。王国もパイソンの苛烈なやり方に不信感を抱いていたから、パイソンに領地を豪族たちに返還するよう要請を出したの。もちろんパイソンは断ったわ。それが戦争の引き金になったわ。」


なるほど、それでパイソンと王国が争うきっかけになったんだ


【マリー・ブライド】

「当時の私は王国に所属する聖女として王国軍の祈りを捧げたわ。まさか兄がここを攻めてくるとは思わなかったもの。貴方も映像で知っての通り、戦争が始まったわ。結果は王国軍の勝利、パイソンの本拠地の城を乗っ取ったわ。でもそれがきっかけでパイソンが邪神に魂を売ったの。私はすぐに国王にこの事を話したけど聞く耳を持たなかったわ。」


私もあの映像は嫌でも忘れられない。邪神、血の契約、邪神の軍隊、そして殺戮の嵐、私の頭にこびりついて離れない


【マリー・ブライド】

「貴女が知りたがっていた続きを見せるわ。」


マリー様が映像の続きを見せてくれた。二人は自分の武器を使い、激しい一騎討ちを展開しながらも会話していた


【マリー・ブライド】

「パイソン、どうか目を覚まして!本当の貴方は心優しく強い人だったわ。」


【パイソン】

「貴様に何が分かる!神殿で育った貴様に俺の気持ちが分かるか!」


【マリー・ブライド】

「お願い!兄さん!目を覚まして!私、こんな形で再会なんかしたくなかった!」


【パイソン】

「兄さん?何を言っている。俺は貴様など知らんぞ?」


【マリー・ブライド】

「忘れたの!私よ、マリー・ブライドよ。私たちは兄妹なのよ!」


【パイソン】

「俺は復讐のために全てを捨てた。貴様のことなど、知らぬわ!」


【マリー・ブライド】

「きゃあ!」


パイソンの馬鹿力に私は吹き飛ばされた。パイソンはその隙を逃さず、マリー様の右肩に剣を突き刺した


【マリー・ブライド】

「アアアアアア!」


マリー様は突き刺された激痛に悲鳴を上げた。パイソンが止めを指そうとした瞬間・・・


【パイソン】

「んん?」


パイソンがもう一本の剣を振り下ろそうとした瞬間に動かなくかってしまったのだ


【パイソン】

「パイソン、貴様!私に逆らう気か!」


パイソンの心が残っていたのか、マリー様に止めは指さなかった


【マリー・ブライド】

「くっ、はっ!」


マリー様も隙を逃さず、パイソンの腹に【マリーの神槍】を突き刺した


【パイソン】

「ぐっ!」


パイソンも突き刺された激痛に表情が歪んだ


【マリー・ブライド】

「邪神、我が兄、パイソンから離れろ!お前の軍隊も一緒に地獄へ行け!」


マリー様は呪文を唱え、パイソンと邪神を分離させようとした


【パイソン】

「ぐっ!」


パイソンはもう一本の剣をマリー様の胸部中央に突き刺した


【マリー・ブライド】

「がはっ。」


マリー様は口から血を吐きつつも、何とか意識を保っていた。やがて二人は互いに睨み合いながら、そのまま息を引き取った。その時、パイソンの腕輪がスルッと外れて地面に落ちた


【骸骨兵士】

「ウオオオオオオオ!」


骸骨兵士たちが叫ぶと黒い霧となって消え去った。そして映像は終わった


【マリー・ブライド】

「結局、邪神とその軍隊を封印することはできたけど、兄と邪神を切り離すことはできなかったわ。でも私の力と貴方の力が合わせれば兄と邪神を切り離すことができるかもしれない。ユウナ、どうか力を貸してほしい!」


マリー様の真意が分かり、私もマリー様のためにも働こうと決めた


【ユウナ・アスファルト】

「はい、微力ながら必ずやり遂げてみせます!」


【マリー・ブライド】

「ありがとう、ユウナ。もうすぐ邪神の谷に着くわ。目覚めなさい。」


マリー様は優しく微笑みながら私は意識を失った


【ヒミコ・イマール】

「ユウナ様、ユウナ様!」


【ユウナ・アスファルト】

「うーん。あれ、戻ってる?」


【ヒミコ・イマール】

「ユウナ様、良かった!」


【ユウナ・アスファルト】

「きゃあ、ヒミコさん!」


私はヒミコさんに抱きつかれ、思わず倒れてしまった


【ユウキ・イマール】

「姉ちゃん、ユウナ様、困ってるよ。」


【ヒミコ・イマール】

「あ、ごめんなさい。私たら。」


【アラン・レクサス】

「いや、何事もなくて良かった。」


【アガサ・ドリトン】

「私もびっくりして寿命が縮んだ。」


【ユウナ・アスファルト】

「皆さんに迷惑をかけました。すいません。」


私はみんなに謝罪をしたと同時にどれくらい寝ていたのか気になった。


【ユウナ・アスファルト】

「そうだ、私、どのくらい寝てたの!」


【アガサ・ドリトン】

「ユウナ様が倒れられて、10分程度です。」


【ユウナ・アスファルト】

「10分!」


それほど時間が立っていない。私はほっとした


【ユウナ・アスファルト】

「そう、10分なのね。」


【ヒミコ・イマール】

「それでなんで倒れられたんですか?」


【ユウナ・アスファルト】

「そうだ、実はね。」


私はマリー様の神託をみんなに話した


【ヒミコ・イマール】

「まさか、救国の聖女様とパイソンが兄妹とは!」


【ユウキ・イマール】

「それで救国の聖女様は止めてほしいと!」


【アラン・レクサス】

「信じられん。」


【アガサ・ドリトン】

「それでユウナ様は救国の聖女様とともにパイソンを救うということでよろしいのですな。」


【ユウナ・アスファルト】

「えぇ、マリー様とパイソンに絡み合う邪悪な楔から解き放つのよ。そして邪神をやっつける!さぁ、出発よ。邪神の谷はすぐそこよ。」


【ヒミコ・イマール】

「ユウナ様、待ってください!」


【ユウキ・イマール】

「おい、姉ちゃん、荷物荷物!」


【アラン・レクサス】

「ふぅ、やれやれ。」


【アガサ・ドリトン】

「若いとはいいのう。」


私たちは魔力飛行船に乗り、邪神の谷へと向かった











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