概要
雪を食い破り吹雪に咲く、業が生んだ紅い花―
日清戦争の勝利に巷が沸き返る明治中期。
「生家に顔を見せにこい」という短い手紙を受け取った主人公は、十数年ぶりに故郷――戦勝景気とは掛け離れた山深い寒村へ帰省する。
主人公を温かく迎える故郷の人々と、父母との再会。そして彼の前に現れる口のきけない少女。
やがて、再び村を襲う飢饉によって村人達の確執が表面化する中、幾度も過る「真っ白な世界」の記憶と、山にまつわる忌まわしき業。
…それはかつてこの地で命を落とした一人の遊女、心胆寒からしめる雪女郎伝説の悲劇の再来か――
「生家に顔を見せにこい」という短い手紙を受け取った主人公は、十数年ぶりに故郷――戦勝景気とは掛け離れた山深い寒村へ帰省する。
主人公を温かく迎える故郷の人々と、父母との再会。そして彼の前に現れる口のきけない少女。
やがて、再び村を襲う飢饉によって村人達の確執が表面化する中、幾度も過る「真っ白な世界」の記憶と、山にまつわる忌まわしき業。
…それはかつてこの地で命を落とした一人の遊女、心胆寒からしめる雪女郎伝説の悲劇の再来か――
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!引き込まれる方言
まず最初に言っておきます。これは読み始めたら止まらない、止められない『魔力』のある作品です。
しかも朝からゆっくり読んでも午前中に読み終えてしまえる無駄無くまとまった構成と文章力が凄い。……私は一気読みしましたよ。
実は、私はこの作品を読むつもりはなかったのです。別の人の別の作品を読むつもりでいたのですが、検索をミスしてこの作品に迷い込んだのです。
一話を途中まで読んで「あ、間違えた」と思ったのですが続きが気になり2話、3話と……気が付いたら全話読み終えてレビューまでしています。
この小説は『面白い』と一言で括れない魅力と魔力に満ち溢れていました。
日清戦争後の東北。山間の寂れ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!雪に閉ざされた小さな村での美しくも哀しい深紅の悲劇
主人公の『私』視点で日清戦争後の情景が細やかに描き出されていてタイムスリップしたような心地になりました。
また田舎特有の親密で温かいながらも陰湿で閉塞した雰囲気の寒村に帰ってきた『私』が過去の自分の記憶を掘り起こしながら、村の隠された真実に辿り着くまでの一部始終は、平穏としながらもやはりどこか虚昏く、ゾクゾクとして読者をいい意味で不安にさせます。
村人たちにとっては因習を断ち切るという意味では救いだったのかもしれないけれど、『私』と佐保子さんのことを思うと……。時代が違えば展開はまったく異なった結果になったのかもしれません。かつては実際にそんな村もあっただろうと一考する切欠として興…続きを読む