第20話 自然は大事だな

 

 荷馬車を手に入れたおかげで、スムーズに進む事が出来た。運転が出来るギフターブに、馬車の操作方法を聞きながら、2匹の馬を操る。


「なかなか、コツがいるな」


「初めてとは思えない程うまいよ」


 ギフターブの説明はわかりやすく、車に比べたら簡単だった。


「ユウと馬車に揺られながら、綺麗な景色の旅なんて、素敵……」


 荷馬車は、大きいのをくれたが御者席は2人しか座れない。

 アイスがわがままを言うので隣にアイス、後ろにギフターブと双子が座っている。


「馬車はいいな。魔物の素材で大改造したら、面白いのが出来るぞ!」


 昔から、車やパソコンは改造やオプションを付けるタイプだ。


「ユウったら、オモチャを貰った子供みたい。でも、ユウがいじったら、大変な事になりそうですね」


 興奮気味のオレに、暖かい目をするアイス。

 この、わくわくがわからないんだろうなぁ。堪らなく、楽しいのに……改造には、ロマンがあるからな。


 たまに、馬車の前に現れる魔物を魔物で倒しながら、馬車の旅を楽しんだ。


 その日の夜〜


 晩飯は、デビルバッファローのステーキにした。

 悪魔のような角に、獰猛な性格から呼ばれているらしいが、大きな岩を焼き、その上で作るステーキからは、焼ける肉汁でいい匂いが漂うが、魔物も釣られていた。


 結界のおかげで、魔物の心配はないに等しいのでゆっくりとステーキを楽しみ事ができる。


 オレ達は、魔物の断末魔をBGMに、ステーキから溢れる肉汁と舌の上でとろけるステーキを、楽しんでいた。


「まるで、悪魔の晩餐だよ」


「断末魔がなければ、素敵な夜なのに……」


 状況にツッコム、オレと悲しげにステーキをほうばるアイス。


「夜間の旅で安心して、ステーキなんて贅沢なんだぜ……旨いなコレは」


「ステーキ最高……」


「贅沢、最強」


 ギフターブと双子は、素直にステーキに喜んでいる。慣れとは、恐ろしいなぁ……


 今までは、草の上にシーツを引いて寝ていたがコレからは馬車がある。


「ゆっくり寝れるが、もっと快適にしなければいけないな。羊の魔物がいたら優先して、狩るしかないな」


「どうするんですか?」


「羊の毛を床に引き詰めるんだ。フワフワして気持ちいい……ぞ」


 馬車の中で横になりながら、オレの腕枕で寝るアイスと話をしていたがいつの間にか寝ていた。


 起きると腕の周りが濡れいた。アイスのヨダレでベショベショだったので口元と床を拭き朝食を作る事にした。


 ギフターブ達が、朝から何かしていたが、オレは理解ある大人だ。気にしない事にした。


「昨日はステーキだったから、朝は、さっぱりしたいかなぁ」


 サラダ、柑橘系のジュース、薫製肉のサンドイッチを作った。

 包丁はいらない、風魔法で一緒でサラダとジュースが出来る。薫製肉も魔法で作れる。燻せばいいだけなので簡単だ。


「魔法は、万能だよな」


 げんなりした、ギフターブと艶々の双子に引いているアイスが起きて来た。


「朝から、大変な事になってたよ」


「絞りたては最高……」


「濃厚でいい」


「私だって我慢しているんですから、自重して下さいよ」


 お前が言うなよ。

 アイスは前に薬を盛った罰で、2人きりの時以外は禁止にしていた。


「アイスも大人だから我慢できるよな?」


 ジュースを差し出しながら質問すると「当然です」と言ってジュースを飲み干していた。


 魔樹の大森林に着くと木が蠢き、歩いていたので風と水魔法で倒していく。


「植物系が、やっぱり多いんだな」


「木材は確保ですね」


「いやいや、2人して、何でそんなに冷静なんだよ!」


 焦るギフターブに説明する。


「だって草と木だからな……飛ばすの種ぐらいだろ、形状から見て」


「そうですね、打ち落とせば怖く無いですよ」


 魔法でデビルプラントや巨大食虫植物を倒していく。

 小動物のような声とへんな汁を出しながら消えていく。


「宝珠の数が足りないから、ヤバイんだよ」 


 そうか、確かに10個ぐらいしか、なかったもんな……数を増やせば、いいんじゃないかな。


「ギフターブ、宝玉はなんでもいいのか?」


「そうだな、硬くて透明なら大丈夫だが……」


 なるほど、じゃあアレで作れるかも、知れないな。


「クロス、宝石クラブの甲羅で宝玉を作れるんじゃないか?」


『出来るぞ。ワシがやってやるから、左手を貸してくれ』


「わかった。頼んだぞ」


 右手で魔物を倒す為に魔法を放ち、左手で、透明な甲羅をウォーターカッターの原理でカットをして、加工していく。


 15個ぐらいを作ると1つずつ投げて渡した。


「使えるなら、それで戦ってくれ」


 魔物の数が多く、逃げながら双子と一緒に戦っていたギフターブは、オレが宝玉を作るのを見てはいなかった。


 突然、渡された宝玉に驚きながらも宝玉を操ると、かなり良かったようで、散弾のようにあやっていた。


「今まで以上だ! 最高だよ、コレは!」


「まだ、いるか?」


「あと、10個は行けると思う」


「わかった」


 先程と同じ作業を繰り返すと10個の宝玉は、すぐに出来た。


「使ってくれ」


「えーー! 今作ったのか? じゃあ、さっきくれたのも?」


 オレには、両手を使っても一つも作れないがクロスに掛かれば楽勝だ。しかし、事情を知らないギフターブに説明は難しい……


「ギフターブは、善人で信用できる人だ。双子もただ一途なだけの善人だ! もう、いいんじゃないか?」


 突然、オレが叫んだから、ギフターブは驚いていた。


「信用してくれて嬉しいが、どうしたんだ?」


『今のは、ワシに言ったんじゃよ。ギフターブにソラとリク、はじめましてじゃな。ワシはクロスじゃ、優のひいじいさんじゃ』


 クロスは、新しく自由自在に飛ぶ事が出来るようなった。つまり……


「ほ、本が浮かんで喋ったーー!」


 ギフターブは、腰を抜かし、ソラとリクは震えながらギフターブにしがみついていた。


 ある程度の魔物を倒してから、帰る途中にギフターブ達に、旅の目的とクロスの説明をした。


「す、凄いじゃないか、世界から魔物をなくす為の旅なんだろ? しかも、英雄クロス・ベクドールと一緒に……最高じゃないか!」


 ギフターブは、子供の頃に村が魔物の群れに襲われて、家族が亡くなった。自分と同じ子供を増やしたくない……ギフターブが孤児を保護するのは。子供の時の思いから旅を続けていた。


 ギルドの報酬も、孤児院にほとんど寄付しているそうだ。


 ギルドに戻ると、クロスが魔物の木材であっとゆうまに巨大な倉庫を作り。ギルド職員全員とギルドに来た冒険者達の度肝を抜いた。


 今まで以上に、大量の魔物を納品されて新しい異名が付く事になった。それは"職員殺しのユウ"だった。


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