第5話 ドラゴンは色々と美味しいな


「君の師匠さんが、あのオークの軍団を倒して、帰って行ったと?」


「はい。確か極位魔法?って魔法だったような?」


 クロス(師匠)がすごい魔法を使って、オークの大軍を倒して去った事にした。


「アイスも見たよな?」


「はい、見ました。すごい魔法でした」


「なるほど、素晴らしい御仁だ! 人々を助けて颯爽さっそうと去るなんて……」


 ここのギルドマスターは、かなり英雄譚好きであっさり信じてくれて助かった。

 アイスに余計な事を言わないように、ジェスチャーや目で合図を送ったりして、大変だったがわかったようだ。


「素材は我々が責任を持って買い取るし、師匠さんが来たら是非ギルドに来て頂くように伝えて欲しい。クロス殿かー。神話にある″魔術の祖″と同じ名前とは素晴らしいな」


「そんな人がいたんですか?」


「なんだ。ユウ殿は知らないのか? 魔法基礎を作った方で、古の邪神を倒した英雄だぞ、かの有名な魔導都市クロスの由来でもあるんだ。魔道士なら、知っておいてもいいと思うぞ」


「ヘェー」


 まずい。長くなるヤツだコレ、切り上げないと永遠に続くぞ。


「じゃあ、夜になってきたので、オレ達は宿を探すのでそろそろ……」


「じゃあ、明日また来てくれるか、まだまだあるんろ? 買い取り……」


「わかりました。明日クエストも受けたいのできます」


 長い説明が終わり、ようやく解放されたが2人共疲れていた。


「大丈夫か? 顔色悪いぞ?」


「正直、疲れました。ユウの謎のジェスチャーや行動を理解するのも疲れましたー」


 察しの悪いアイスに、様々な合図を送るオレの身にもなってほしいが、オレも疲れた……


「酒を飲んで忘れよう」


「そうですね」


『また、二日酔いにならんようにするんじゃぞ』


「ユウは、腹話術が好きですね」


 アイスは完全にオレと思っている。もういいや、その内わかるだろうから。

 アイスが宿屋を知っているからと、案内してくれるので正直助かる。

 オレ達だと、わからないからな。


「いらっしゃい、アイスー! 久しぶりじゃないか?」


「女将さん、お久しぶりです」


「新しい仲間かい? アイツらやな奴らだったから、よかったね? それとも、アンタの良い人かい?」


「もうっ、女将さん!……良い人です」


 からかう女将に、満更でもないアイス。女将さんと軽い挨拶をしてから、川魚があと1人分あるらしいからアイスに譲り、オレは肉料理にした。

 後ろで、冒険者の話声が聞こえて来る。


「なぁ、聞いたか? なんでも、すげ〜魔道士が来て、オークの大軍を倒したらしいぜ」


「聞いたぜ、なんでも地形が変わる程の大魔法らしいじゃねえか? すげ〜な」


「お待たせ! うちの料理は美味いよ!」


 コレは、確かに旨そうだ。鉄板ステーキになっていて油が跳ねている。


「美味いな、なんの肉だろ?」


「それは、こけ豚ってゆう、大きくて頭と背中に苔が生える豚です。コレも美味しいですよ、あ〜ん」


 フォークの川魚を食べるように勧めてくる


「あーん、確かに美味いな」


 果物の酸味が効いていて、美味い焼いた川魚を食べていると、アイスがオレのステーキを催促してきたので、食べさせてあげた


「あーん、やっぱり恋人同士は、あーんですよね」


 なんだ、このかわいい生き物は、後ろから「バカップルが死ね」と言っていた。

 食事を楽しんでいると、他の冒険者の気になる話が聞こえた。


「近くの、プレートマウンテンで、ドラゴンが出たらしいぞ」


「すぐ、そこじゃねぇか? 大丈夫なのかよ、それ……」


「ギルドで、討伐クエストが出るらしいな」


 ドラゴンか大変だな、この豚、美味いな。


『優、明日はドラゴン退治じゃな』


「ぶー、はぁ? なんでそうなる?」


「ユウ? 大丈夫?」


(アイスにも喋らずに聞こえるように話してくれ……)


 アイスは突然のクロスの声に驚いていたが、すぐに慣れたらしく、初めてクロスを信じた。

 食事を終えた後、部屋で話し合いになった。


「……で? なんでドラゴン?」


『お前達に、前に見せたのは広域魔術じゃたから、今回は単体魔術をみせたいし、ドラゴンは美味いぞ』


「ユウ! ドラゴンは、超高級食材でもあります」


「えっ? 本気まじで……そんなに美味いの?」


 ドラゴンは庶民が簡単に食べる事が出来ず、地球でゆう所のキャビアやトリュフみたいな感じらしい。


次の日ーー


「ドラゴンですよ! ドラゴン! 私、初めてです、あっヨダレが……」


 テンションの高いアイスと山に登っている。

 ギルドには、買い取りの素材を山のように渡した後、山の討伐系クエストをかなり受けた。

 防具屋で防寒装備一式を、2人分買い山に来ている。


「あっ、いた」


バシュン、バシュンーー


 2人してホワイトウルフやスノーイーグル等の山にいる魔物を倒しながら、歩いて行く。

 ほとんど無意識て、様々なマジックミサイルを出している。

 追尾付きのマジックミサイルを連射できるようなり、マシンガンみたいになっている。


「そういえば、最近、魔力切れが全くないんですよね? なんでだろ?」


「魔力切れ? オレは、なった事がないな」


『それはな、ワシが足りなくなった魔力を、渡しているからじゃ』


 マジックミサイルを2人で撃ちながら、話をしていたが、どうやらサイクルを作ったようだ。


 倒した魔物からクロスが魔力を奪い、オレ達が魔力を使うが、そのうち慣れて魔力の消費が減る、倒して奪うのサイクルが出来ているから、無くならないらしい。


「だから、気にせず撃ちまくるんじゃ! どうせなくならん」


「ヘェー、すごいサイクルですね」


 鳥型の、魔物が落ちてくるがクロスが回収するのですぐに消える。まるで、シューティングゲームみたいだ。


「じゃあ、今度、魔物図鑑を買って2人で勉強したら、効率がもっと上がりませんか?」


「それはいいアイデアじゃ! 優も勉強するんじゃ」


 真面目なアイスとクロスがタッグを組んだら、勝てないよ、勉強は決定かな。

 魔法範囲内の魔物を狩りながら、かなり登って来た。

 どうやら、ブルードラゴンの巣があるようだ。


「そういえば、ドラゴンは財宝を集めるって本当か?」


「財宝とゆうより、キラキラと光る物が好きなんです」


『人間とは感覚が違うからのう、財宝があったらついでに、いただこう』


 まるで山賊みたいだぞ、クロス。


 大きな洞窟がドラゴンの巣のようで、財宝は沢山はったが、ドラゴンは留守みたいだ。


『おっ! 財宝じゃな、棚ぼた、棚ぼた』


 山のような、財宝は根こそぎ回収して、ドラゴンを待っていた。


1時間後ーー


 ドラゴンが上空から帰って来た。


『おっ、ワシの出番じゃな! 体をかりるぞ』


 両手に魔力を圧縮させて、真っ赤に光る。


『貫け! 極位魔法・皇竜波こうりゅうは!』


トガアァァーーーーーー


 ブルードラゴンの腹を貫通したレーザー砲は、雲を切り裂いていく。

 遠くでブルードラゴンの断末魔と共に、回収された。

 オレとアイスは凄じい魔法に驚き、声が出ない。


『コレが皇竜波じゃ、後ろにいる敵もろとも風穴を開ける魔法じゃな! 帰りも魔物退治じゃ、帰るぞ』


 今回のクエストはかなり良かった。ドラゴンにドラゴンの財宝、魔物自体に、クエスト報酬、そしてーー


「ドラゴンステーキ出来たよ」


 女将さんに頼んで、ドラゴンの肉を調理してもらったが、噛む必要がない。すぐに溶けてなくなる。


「美味しいレフ、幸せ……」


 アイスは、涙目で喜んでいる。ドラゴンステーキは、最高に美味かった。

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