第一章 始まりの解放者編

第1話 魔導書との出会い


 オレは神田 優。何処にでもいるしがないサラリーマンの30歳で天涯孤独の独身だ。


 クォーターらしいがオレの髪は黒い、だか瞳は青かった。


 だが、モテた試しがない。残念クォーターなんて呼ばれ、ゲームとアニメ、漫画好きのオタクにいつの間にかチェンジしていた。


「ハァ〜、今日も最悪だった」


 30歳になり、長年の会社に務めているが、最悪な上司の部下になってしまった。

 課長の失敗をオレのせいにされた上に、残業まで押し付けられ、終電になった。


「電車、来ないかな〜」


 電車を待っていたら、後ろでカップルが喧嘩を始めた。


「なによ! 浮気した癖に、開き直るの?」


 キャバ嬢みたいな女がホストみたいな男に、怒鳴りつけていた。


「痴話喧嘩かよ、他所でやってくれよ……オレなんか彼女いないのに……」


 残業の上に、他人の痴話喧嘩まで聞かされ、たまらない気分になった。


「お前、いい加減にしろ!」


 男が女を押し、女がオレの背中に当たり、オレは電車にひかれた。



♢♢♢


 気がつくと白い空間にいた。これが、死後の世界ってやつか。

 

「それにしても、酷い終わりだ。完全にとばっちりじゃないか、ハァ〜」


 いつの間にか、目の前には一冊の黒い本があった。

 周りには何にもない。


 何処からか渋い爺さんの声が聞こえてくる。


『神田 優よ。聞こえるか?』


「……誰だ!……何処にいる!」 


『目の前じゃ、目の前』


 白い空間には、黒い高そうな本しがない。


「……この本か?」

 

『ワシは最強の魔導書じゃ! お主のご先祖様じゃぞ、お主に最強の力を与えよう』


「……怪しいな!」


 突然、本にご先祖様といわれても、信じるはずがない。


『怪しくないわい! よくあるだろ? ゲームや漫画である、あれだ、あれ』


「だいたい何で、本なんだよ! オレは、人間だぞ! だいたい、こういう場合は、神様や女神様が来るもんだ」


 思わずツッコミを入れてしまった。


『ワシは、神族ではないぞ。お主にわかりやすくゆうと、どちらかと悪魔側かな?』


「はあぁ? 悪魔?」


 益々、怪しいな。まさか、地獄行きなのか。


『お主を異世界に招待しよう! よかったのう、日本男子の憧れの的である。剣と魔法のファンタジーじゃぞ』


「それって、本当なのか?」


『ああ、本当じゃぞ。お主の先祖にあたる、清春との契約があるし、清春は娘の旦那だからな』


「契約? 娘の旦那?」


 しばらく考えたが、思い当たる事がなかったのと、両親はオレが生まれから、すぐに亡くなったと孤児院で聞いていた。


「何の話だ? 全くわからん」


 何故、契約しているのか黒い本は話を始める。


 話をまとめると、オレのひいひい爺さんが契約して、魔導書の娘と結婚したらしい。

 該当者が居なく、今まで契約を果たせなかったらしい。 

 オレは該当するらしいが、何故か呼ぶ事が出来なかったので、ずっと待っていたらしい。


 ひいひい爺さんの借金をオレが、返すみたいなもんだもんな。

 債務整理して財産放棄的な事できないかな、と聞いたらダメだった。


「何をどうすれば良いんだ、さっぱりわからんぞ」


『これから行く世界で、お主は自由にしていい。ワシも一緒じゃからな』


「一緒だと……」


『ワシだけだと帰れんのだ……すまんな』


 本気で言っているのか、謝られても契約とゆう事は、強制なんだから絶対本心じゃない。


『お主がこまる事がないように、ワシも力貸すから一緒に頑張ってい・こ・う・な!』


「い・こ・う・な、じゃねー!」


 グイグイ来る魔導書に「悪びれてねぇ」と感じたが悪い話ではない。


『日本人の大好物な剣と魔法の世界だぞ。ワクワクするだろ? うまくやれば、男の夢″ハーレム″だって夢じゃない! エルフだって、ケモ耳娘だっているんじゃ』


「なっ、なんだと! それを早く言ってくれよ」


 ハーレムそれは、男の夢とロマンだ。


『じぁあ、行くかの!』


「優だ! オレの事は、優と呼んでくれ」


『ワシは、クロスで良い。では、行くかの優』


「わかったよ!」


 黒い大きな玉が白い部屋の空間を削り取り、穴が1人と一冊を飲み込んでいった。




♢♢♢



 真っ暗だ。何も見えない。


「クロスさんや何処だここは?」


『おかしいのー? 何処なんじゃろうな?』


「何処なんじゃろうな?」じゃない。クロスが分からなければ、オレがわかるはずがない。

 しゃがんで足元を探ると、ツルツルの床があるのがわかった。


 建物の中らしいな、明かりが欲しいが……

 スーツのポケットを探ると、タバコとジッポがあったのでジッポを付けた。


 ボッと周り明るくすると、廃墟らしい事がわかった。

 ボロボロのカーテンを破り、転がっていた角材にカーテンを付けて松明を作る。


 ふっ、ゲームの知識が役にたったな。オレは、ほくそ笑み。 


『ライトじゃ』


「……」


 淡い光が周りを明るくする。


「魔法があるなら使わんかい!」


 松明を床に投げつけながらツッコム。


『楽しそうにしとったのでな、ごめんな?』


「優しい感じ出しやがって、白々しい。魔法って便利だな」


魔法があるのは聞いてたが、クロスが使えるならかなりいい。

しかし、オレがかっこいい感じに魔法を使うのが重要だ。


「なあ、クロス。オレも魔法を使いたい。どうすれば使える?」


『ん、じゃあ使ってみるか。どんな魔法が使いたい?』


「まずは、やっぱり火だよな?」


『火か……まず、イメージしてるのじゃ』


「わかったよ」


  さすがに三十路で「ファイヤーアロー」は恥ずかしい、死ねる。


 火のイメージだな。よしよし。手の平から火炎放射をイメージしてみる。


「おー! 出た出た、感動だなー!」


『なっ!? 優、威力が強すぎる! 抑えろ、抑えるのじゃ!』


火は、部屋に引火してものすごい勢いで燃え上がる。


まずい、逃げなければーー


部屋を出ようとすると立て付けが悪くドアが開かない。扉を蹴破り、障害物を避けて外に出た。


「はぁはぁまじで、はぁはぁ死ぬかと思った! ヤバかった!」


『かなり間抜けな、死にざまになる所じゃたな』


「異世界来て、すぐリタイアってシャレになってねーよ」


『自業自得じゃな』


呆れるようにクロが呟く。

周りは森で、大きな洋館がぽつんと立っていた。

洋館がどんどん燃えていく。

 

「ギャャャアァァァーーーー!!!」


『「!?」』


耳を裂く甲高い叫び声で周りが凍り付く。

窓から豚の頭に鎧を着た化け物が飛び出して、柵に突き刺さり絶命した。


「まじか、オークじゃないかこれ?」


『オークじゃな』


 次から次へと、叫び声が聞こえて窓からオークが飛び出して床に落ち絶命していく。


 オレは、静かに両手を合わせて心の中で謝った。

「本当にごめんなさい」と思いながら見ていた。

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