魔導書になったご先祖様とオレの冒険譚

カラッと唐揚げ

プロローグ 追憶の神話

第0話 始まりの物語


 数多の物語の一つの話。

 神々がいた時代の話。


 神殿の最奥の一室で戦いは行われていた。


「貴様ら! 薄汚い人間共が、神である我に逆らうのか!」


 神々しき光に対人する12人の影が、光に向かい魔法や矢を放つ。


「人間を舐めるなよ! 狂った神が!」


 1人の戦士が光に剣刃を飛ばす。


「奥義・エリアガード!」


 大楯の戦士が、雨の様子な光の光線を大楯から広がる壁が防ぐ。


「くらえ、封印玉!」


「行け、封印晶!」


 2人の魔道士が、それぞれ宝玉と結晶を幾つも手の平で光を放ちながら防いでいる。


「くっ! 後悔するがいい! 貴様等は未来永劫に呪われるのだからな!」 


「たとえ呪われようとお前だけは許さない!」


 黒衣に黒い魔道士が高らかに叫ぶと、光の後ろに魔法陣が浮かび、光が吸い込まれていく。


「貴様は、次元の裂け目に封印する!」


 黒い魔道士が両手に魔力を集中して魔法を放った。


「究極魔法・亜魔琉照アマルテこれが人間の力だ!」


 


「我が封印されようが、貴様は許せない! 魂まで砕け散れ!」


「危ない! クロス!」


 女武闘家がクロスと呼ばれた魔道士を庇い光線に貫かれた。

 空間が歪み瀕死の女武闘家が吸い込まれてゆく。


「ダメだ。アリア!」


 クロスは、アリアを手を取るが吸い込む力が強すぎる為引っ張られる。

 クロスは、振り替え仲間のリーダーの目を見た後に一言だけ言った。


「後は頼む」


 アリアと共に時空の彼方に消えた。


「すまない! クロス! アリア!」


 噛み締めた。唇から血を流しながら戦士は泣いていた。


 邪悪なる神は、次元の裂け目に封印され、戦士達は勝利したが誰一人祝う気になれなかった。



♢♢♢


 空間の裂け目でクロスは、アリアを守る為に魔法をかけ続けていた。


「やるしかないか、アリアは必ず助ける!」


 どれくらいの時が流れたのだろうか、限界まで魔法で防御しながら、愛する人を治療していた。


「神の呪いか、それとも魔力の限界が来たか……どちらにせよ、ここで終わりか……」


 体は、度重なる魔法の行使によるものなのか、それとも、邪神の呪いのせいか体が変形していた。


 体全体が縮まり、子供にまで変わり果てていたが、強靭な意志の力で理性を保っていた。


「光……」


 空間に亀裂が入り、わずかな光が見える。


「彼女だけでも……無事に出さなければ……」


 最後の力を振り絞り、小さくなった子供の手で空間を広げた。


 ……気がつくと、夜だった。


 アリアが、隣で寝ているのか寝息が聞こえた。

 池が隣にあるらしく、カエルの鳴き声が聞こえる。


『助かったのか、やったぞ! オレ達は生き延びたんだ!』


 嬉しさの余り叫ぶが、何かが変だ。体が全く動く事ができない。


『なんだ、動かない! 誰か来る……』


 小さな子供が走って来る。子供はかなり汚かった、服は継ぎ接ぎだらけで、わらで出来た履物をはいていた。


「誰か、倒れてる! 行き倒れか? 綺麗な本だなぁ」


 子供が軽々しく、私を持ち上げた。


『なにー、持ち上げただと!』


「わっ! 本が喋った! あやかしの類かな、婆様が付喪神つくもがみってのがいると言ったが、お前は本の妖か?」


 何を言っているのか、分からないがこの鼻垂れ小僧は私を本と言っていないか。


『何を訳の分からない事を……私が本に見……える!』


 月明かりに照らされた池には、子供が黒い一冊の本を持ち、話しかけていた。 


「オラは、清春。神田 清春だ」


『私は……クロス・ベクドールだ』


 これが、大正時代に出会った清春との出会いになる。



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