第2話 魔法は難しいな
炎が収まり焼け落ちた廃墟の前で、オレ達はオークの持ち物を漁っていた。
オークは魔物で、人間を食うらしいがオークも美味いらしい。
収納魔法が使えるらしく、オークの死体を回収していく。
様々なオークと、オーク達が集めたアイテムが地下室にもあったのを回収した。
クロスは魔導書だけあって大抵の事ができるようだ。その
『優は、かなりレベルが上がった!』
「……お前大丈夫か? 突然、何言ってるんだ?」
『いやいや、昨日オーク倒したじゃろ? だから雰囲気だけでも、味わってもらいたくてのう』
「この世界には、レベルの概念があるのか?」
『あるわけ無いじゃろ、ゲームじゃないんじゃぞ、だから雰囲気だけじゃ』
「わかるかーい!」
朝飯にしようと言うと、オークを一体ドサッと出してきた。
「クロスさんや。オレが、解体するのか?」
『ワシは手がないぞ。優がやらなかったら、誰かするんだ?』
「オレ……やり方わからんけど、どうすればいいんだ?」
クロスが短剣を空中に出して、地面に刺さる。
『さあ、やり方は教えてやる。……やるのだ』
「大きな生物の解体は……抵抗があるな、やらなきゃ、
力を込めてオークを解体していく、血の匂いが酷くて胃液が上がるが、しばらくするとすぐに慣れてきた。
1時間位でようやく解体できた。
枝に刺してオーク肉を焼いていくが、かなり、味気ない、塩が欲しいな……
不味くはないが味気ない朝食を食べながら調味料の事を考えていた。
「なあ、収納魔法だっけ? 地球の服とかないかなぁ? スーツに革靴はさすがにキツいぞ」
『残念ながら、次元を超える時は物は持って行けないようじゃ。だがの、昨日のオークの装備品一式があったわい、剣でいいだろ?』
「おっ、ラッキー! とりあえず、使って見るかな、剣は使った事はないが、なんとかなるだろ」
着替えたら、村人Aって感じになった。贅沢は言えないか……
「とりあえず、人を探すか?」
『それしかないのう』
「魔法の以外は何かないのか? 剣でズバーンって感じでさー」
歩きながら剣を振るが、クロスを片手に持ってるから振りづらい。
『技的なのは修行! サポートはしてやるから、気にせずやれば良い』
「あと、クロス……邪魔」
『邪魔とはなんじゃ! 失礼じゃろ!』
「だってー、片手ふさがるんだぞ? ベルトに付けるブックホルダーないの?」
『ない! 魔法で戦え! 魔法で……丁度いいのがきだぞ』
「えっ!?」
前から大きな猪が走ってくる。コレはまずい。
『ほれ、炎の矢のイメージをすればいい、ちゃんと狙うんじゃぞ』
「イメージだな、わかった!」
ファイアーアローをイメージしながら、弓矢を引くポーズをして射つ。
「やった!出たぞ」
あさっての方に飛んで見えなくなった。猪の突進を横にジャンプしてかわしてから走る。
『弓矢を使った事がないのに、当たるはずがないじゃろ! 指鉄砲でいい! 銃をイメージして指先から弾が飛んでいくイメージじゃ』
「わかった!」
バンッーー
イメージして、振り返り撃つ。
指先から炎の弾と銃声、指先から煙がでている。
猪は、額に穴が空いて死んだ。
「すげーー! けど、痛ったー」
指先は火傷していて痛い。使えないな。戦うたびに火傷は勘弁して欲しい。
「コレだめだな」
『イメージも特訓じゃな』
猪を回収してから、
森の中を歩きながら指先で図形を、火で作りながら歩いていた。
「町がないなー、おっ! ほら見ろよ、クローバーができたぞ! クロス、やるだろ」
『まだまだ、じゃな。キャラクターを歩かせるぐらいしないとな』
「できるわけないだろ……まじかよ」
足元に、半透明な猫がトコトコ歩いている。思わず、さわろうと手でふれた瞬間。
バシャン!
猫は水風船のように破れて、オレはビシャビシャになる。
「やりやがったな! 冷てーな……」
『ワッハッハッハッ! これぐらいはできんとな、
周りから、丁度いい熱風が吹いて服が乾いていく。
「洗濯や風呂も簡単そうだな」
『火ばかりではなく、水や風を訓練すればこのくらい朝飯前じゃわい、ほれ続きじゃ』
指先で水を操る。火と感覚が違う、中々難しいな。なんだか喫茶店でストローでテーブルの上にある水滴で遊ぶような……
『優! 危ない!』
「痛ったー!」
前を見ていなかったので、盛大に木にぶつかりたんこぶができる。
『前を見ないからじゃな……ぷぷぷぷ』
「歩きながらの練習はほどほどにするか……あと、笑うなよ」
『そうゆうな、そういえば、いい事思い付いたんじゃが。矢だけをイメージすれば、火傷はないんじゃないか?』
確かに、水の矢をイメージしてトリガーを引けばいいわけだ。イメージ、イメージ……
「おおー! いいな、これ……」
「木に撃って練習しながら行くかの?……ゴブリンがいるぞ」
遠くに緑の小人がいる。棍棒を片手に凶悪な顔をしていた。雑魚感がすごいな
「狙って、狙って……撃つ!」
ビシャンーー
発射音と共に、ゴブリンの胸に当たり倒れた。
「やった! 当たった!」
「ギャャアギャャア! ギャャア!」
他のゴブリンが二匹出てきて、こちらに怒りながら走ってくる。
「くらえ!」
ビシャン、ビシャンーー
一発は当たり、倒した、外したゴブリンが棍棒で殴りかかってくる。
「あっぶな! くらえ、火炎放射だ!」
「やっぱり、練習は必要だな。危な過ぎる!」
『今のは、全然危ない感じはしなかったがのう』
「危ないだろ。そういえば、ゴブリンって道端で簡単に会うんだなぁ、この世界の人は大変だな」
『うーん……』
珍しくクロスが考え混んでいる。いつも、からかってくるのに……
「どうしたんだよ、何かあったのか?」
『ゴブリン自体は珍しくないじゃが、こやつらの武器に血がついている。しかも、新しい……』
「誰か、襲った後じゃないのか?」
「キャャーーーー!」
女性の悲鳴が
「近いぞ、急いで助けよう!」
『林の方からじゃ』
走り出したオレは、森を抜けるとゴブリンが女性を押し倒して服を破いていた。
ビシャン、ビシャンーー
二匹のゴブリンを火の矢が貫く。敵を追いかけるイメージをしてみたが成功したみたいだ。
「大丈夫ですか?」
『デカイのはオーガじゃ、気をつけるのじゃ』
ビシャン、ビシャン、ビシャンーー
火の矢が三体のゴブリンを射抜くと、オーガが大きな棍棒で襲ってきたので、火の矢を連射していく。
4発ぐらいで死んでくれた。あんなの怖すぎ……
「気絶しているな……ワシは、ゴブリン達を回収するぞ」
見ると、ショートのサラサラした青い髪の美少女で、15歳くらいの魔道士の女の子みたいだ。
「とりあえず……飯にするかな」
♢♢♢
焚き火でオークの味気ない肉を食べていると、女の子が起きた。
「うーん……ここは? ゴブリンはどこ?」
「あっ、起きたかい? オークならあるけど食べる? 味気ないけどな……」
「あっ、塩なら少しだけあります」
皮袋に入っている。塩を振りかけてくれる。
「ありがとう! 美味いな! 塩があると段違いだ! はい、丁度いい頃あいだ」
枝を削って肉を刺しただけの、オーク肉を渡すと勢いよく食べ始めた。
「おいしいですねーって、あなたは誰ですか? ゴブリンは? 私は襲われたはず……」
なかなか、長いノリツッコミだな。しかし、嫌いじゃない
「オレは神田 優。たまたま通りかかったら、君がゴブリンに襲われていて助けたんだ。ゴブリンは倒したよ。今は、食事中……肉、美味。まだあるから食べるかい?」
「はい、ありがとうございます。おいしいですねー、助けてくれてありがとうございます。私はアイスです。ぐっ、水、水……」
「口! 開けて……」
人差し指をアイスの口に、少しだけ入れて水を出すと、すごい勢いで吸い付いてくる。かなりの美少女だが残念臭がする子だな……
「ゴキュ、ゴキュ……はぁ、死ぬかと思いました。ユウさんは魔道士なんですか? こんな魔法の使い方してる人、初めて見ました」
「オレは旅の魔道士でね、アイスは1人かい? 人がいる場所を案内してくれないかな?」
「……」
突然暗くなるアイスに話を聞くと、仲間に裏切られて
「私、ドジだし、冒険者になったばかりで、お前は「足手まといだ!」って言われてたけど……私だって頑張ってたのに……」
昔、後輩の女の子が上司からの嫌がらせで泣いて、よく相談になっていたのを思い出していた。
「人生色々ある、オレで良ければ話を聞くぞ。まぁ、これもなんかの縁だしな。肉もまだあるし、塩もくれたしな」
「ユウさん、ありがとうございます。でも、指を口にいれるのはちょと……」
「おいおい、ここでそれを言うか? あはははは」
「うふふふふ、すいません……」
肉を食べながら、アイスの愚痴をしばらく聞きながら、異世界も世知辛いな。
この世界で、初めて会った女の子がいい子でよかった。話を聞きながら、なんとか力になってあげたいと思いながら、時間は過ぎていった。
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