第26話 キメラは迷惑だな

 

 パレス王国の魔物を、狩まくったので侵入禁止エリアに行こうと、オレ達は考えた。


「ようやくだな。ギルドの情報だと、北にある蠱毒のダンジョンが、侵入禁止エリアだそうだ」


 ギフターブが、前からずっと調べてくれていたが急ぐ必要がないから、行かなかった。


「なんで、蠱毒なんだ?」


「昔、偉大な魔導士が呪いを作る為にダンジョンを作ったそうだ。ありとあらゆる、魔物を共食いさせて、最強の魔物を作ろうとしたらしい……」


『まぁ、比較的に簡単じゃからな。大量の魔物を密閉空間に投げ込み、待つだけじゃ。誰でも、できて、馬鹿みたいに危険な方法じゃ』


 ギフターブの、回答にクロスが捕捉する。


「準備をした後に、ダンジョンに行きましょう」


 アイスのかけ声で、オレ達は蠱毒のダンジョンに向かった。


「不思議なダンジョンだな。魔物がいない……。あと、なんか甘い臭いがする」


 ゴツゴツした岩が多い普通のダンジョンだが、辺りには、甘いお菓子を焼いた時のような匂いがしていた。地下2階まで、来たが一匹も見ていなかった。


『簡単な理由じゃ。すべて、食われたんじゃろ』


 この、広いダンジョンに1匹だけなんて、贅沢な作りだな。


「この、いい匂いは何ですか?」


『恐らくじゃが、外の魔物を誘ってるんじゃろうが、そうだとしたら、かなり不味いのう。蠱毒は簡単に言って、合成獣キメラじゃ。食った魔物の特徴を吸収して成長するんじゃ』


 それって、形や弱点等の情報がないって事か?


『まっ、なるようになるじゃろ。1匹討伐すればいいだけじゃしな』


「そうですね、クロス様。この、メンバーなら大丈夫でしょう」


「ギフ、お気楽……」


「でも、わかる」


 ギフターブ達は、お気楽に考えていた。今まで苦戦らしい、苦戦がなかったので、大丈夫と思っていた。


 ダンジョンの奥に進むと、甘い匂いが強くなっていった。


『そろそろ、現れるはずじゃ。気をつけるんじゃ!』


 木の根が土から飛び出し、一瞬で双子を連れていなくなった。


「「「えっ?」」」


 いきなりの事で反応出来なかったが、双子は無表情で攫われて行った。


「不味いぞ、仲間がいきなり2人減ったぞ!」


「ソ、ソラ、リ、リク……」


 焦るオレに、震えるギフターブ。


「急ぐんですよ!」


『まだ、間に合う。急ぐんじゃ』


 木の根を追いかけると、ダンジョンに中に半透明な巨木が地下にあった。


 根の部分がウネウネ動き、根から上がスライムみたいにプルプルしていた。枝の先には、球体の中に、魔物と骨が実のようなついていた。


「なんだ、あの化け物は!」


『合成獣じゃな、トレントとスライムをベースにしたんじゃろ。球体から、養分を吸収しとる。じゃから、合成獣は嫌いなんじゃ』


 双子も枝の球体の中にいた。


「まずは、2人を助けるぞ!」


「ソラ、リク待ってろよ! ハッ!」


 ギフターブが、宝珠で枝をぶつけるてバシャとゆう水の音と共に、双子は落ちた。


「ソラ、リク!」


 ギフターブが、双子を受け止めると同時に壁まで滑って行った。


「なんだコリャ! スゲー、ヌルヌルするぞー」


 ギフターブ達が、滑った後に残った液体を指で取ると、懐かしいヌルヌルがあった。


「これは……ローションじゃないか」


 ちょと待って、半透明の部分が全部ローションじゃないか。アイツは……


 ギフターブ達を見ると、ローション塗れから立てず、ギフターブが、双子の胸に顔を埋めたりして、ジタバタしていた。


「た、立てない……うわっ!」


「ギフ、積極的……」


「今までにない、興奮」


 双子が、異常に喜んでいた。


「よくも、3人をヌルヌルのグチョングチョンにしたわね。うら……許せない!」


 アイスさん、今羨ましいって言おうとしてなかった。


「く、くらえ〜。や、やられた〜」


 棒読みのアイスが、風魔法を大木に当てるとローションが当たり一面に大量に飛び散り。アイスが、頭からローションをかぶっていた。


「ユウ、た、たすけて〜」


 棒読みのアイスが、満面の笑顔で滑って来た。


「ば、馬鹿! 来るな! アイス! グハッ!」


 頭から、オレの腹のロケットミサイルみたいに飛んで来たアイスと壁まで、流されて行った。


「アイス! よくも、やってくれたな! ヤバイぞ、ヌルヌルして立てない……うわっ」


 足元が滑って、アイスの胸に顔からダイブしてしまう。


「やん! ユウったら、こんな時なのに説教的なんだから……」


 アイスがニヤニヤしながら、ヌルヌルの状態で抱きついてくる。


 ま、不味い! パーティー全員がヌルヌルで、こんなアホみたいな戦いで、全滅してしまう。


「クロス! 切り札を、フルプレートを出せ!」


『しょうがない、ローション塗れで全滅なんてアホは回避するか……』


「ダメ! もったいない!」


 黙りなさい、アイス。そこの、双子。悲しそうな顔をするな!


 前と、違い地面に魔法陣が描かれると、魔法陣から、真紅のフルプレートが現れた。


 オレの体が、ふわりと浮くとフルプレートに吸い込まれていく……


 足元のローションが、熱で蒸発するとカピカピになった。


 キメラが、危険を感じて大量の根が襲う。


「無駄だ」


 青白い炎が、根を焼き尽くすと同時に、キメラごと焼き尽くした。


「スゲーなユウ。どこからどう見ても、魔族側だな」


「最初の地獄の使者……」


「魔王の幹部」


 真紅のフルプレートを、初めて見たギフターブ達の感想は中ボスみたいだった……



♢♢♢



「ハァー、夜に最高のアイテムだったのに……」


「ご褒美用に最適……」


「初めて見た、素材」


 残念がる、アイスと双子だった。オレ達全員がローション塗れになり、帰る事にした。帰る途中で、ローション塗れのオレ達を見た、冒険者がたまたまいた。


「最悪最凶のSランクパーティーは、プレイもSランク級なんだな。スゲーー」


 悪評は、さらに上がった。



 



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