第4話 極位魔法は凄いな


 アイスと道を歩きながら、クロスに教えてもらった魔術の訓練をしている。


「……結構難しいですね」


 アイスは指先で水を数字で変えたり、図形に変えたりしている。


「生き物を作って、操れたら上級だって、師匠からおそわったんだ」


「ユウさんの……師匠さんはすごい人なんですね、あっ! 失敗した」


 クロスの事は故郷にいる事にして説明した。アイスと一緒に修行するのはやる気がでる。


「街までは結構遠いのか?」


「あと、二日はかかります」


「なかなか、遠いなーよし! 当たり」


 一角ウサギを、ファイヤーアローで仕留めた。


 歩きながら矢の練習もできるから、馬車ではなく歩きにした。


 火、水、土、風の順番で魔法の矢で鳥やモンスターを仕留める。回収はクロスがいるから便利だ。


「かなりうまいですね。私もやります!」


 2人で目に入るモンスターを倒していたが、何かすごい魔法が使いたい。必殺技みたいなヤツを……


(クロス、何かすげー魔法を使いたい)


『聞き方が頭が悪そうじゃが、やってみるか?』


 頭が悪いはよけいだか、教えてくれるようだ。丘を越えたら丁度いいのがいるらしい。


「丘の向こうにモンスターがいる」


「本当ですか?な、なんですか?これは……」


 丘を越えたら、大量のオーク大群がいました。数万単位のオークが見える。


『見ておれ、身体を少し借りるぞい、極位魔法きょくいまほうプロミネンスフレア』


 操られたオレは、両手を構えて「極位魔法プロミネンスフレア」と叫ぶ。

 地面が爆発した後、炎の巨大な柱が龍のようにオーク大群を飲み込み全滅した。


 地形は溶岩地帯みたいになり変わり果ていた。


「……なんですか? 今の……凄すぎます!」


(……本当にすげー……あれが必殺魔法?)


『火系の魔法ならな! 他にもまだまだあるんじゃが、敵がいなければ環境破壊だわい』


 驚くオレとアイスがそこにいたが、クロスを知らないアイスに「自分の魔法になんで驚くんですか」とツッコミを受けたがしょうがない。


「訓練したら使えるようになるから頑張ろうー」


「頑張るぞー」


 アイスもやる気になってるしな、オレも頑張ろうかな……

 正直すごい魔法過ぎて、先が見えないが頑張るしかないよな。

 クロスによって無意識に誘導されて、オレ達が通った後は、全てのモンスターを全滅させていた事に後で知らされる。



♢♢♢



 町で鍋や野菜をたっぷり買ったので念願の牡丹鍋にした。

 

「この鍋、最高でふ、あ、熱っ……」


 鼻水を垂らしながら、美味しそうに食べるアイス。鼻水をハンカチで拭いてあげる。


 オレの中で残念な子から、ゲロインになり、残念ゲロガールになっている。


 見た目は、かなり可愛い子なだけに、残念でしょうがない。


 野菜たっぷり、塩牡丹鍋は凄く美味い。奮発して、市場で大量に色々と買ってよかった。


「いやー、最高の出来だよ。おっ、串もできたかな?」


 焚き火で焼いていた。焼き鳥モドキも焼けている。


「これも、美味いな。塩しかないのが残念だか、アイスも食うだろ?」


「もちろんです。……コレも美味しいです! 街の食堂より美味しいですよ!」


「私、ユウさんをパーティーに、勇気を出して誘ってよかったです。魔法の修行で魔法は上達したし、クエストも上手く行ってランクは上がるし、ご飯も最高です! これからも、よろしくお願いします」


 改めて感謝されたが、右も左もわからないオレに、この世界について色々教えてくれるアイスにオレも感謝していた。


「じゃあさ、乾杯するか?」


 酒とコップを出して酒を渡す。


「これからも頑張ろうぜ!」


「はい! よろしくお願いします」


「「乾杯!」」


(クロスもよろしくな!)


『任せておけ、飲み過ぎないようにな? アイスを止めるんじゃぞ』


 クロスに注意を受けたが酒盛りは夜遅くまで続いた。



♢♢♢



 朝になり、目を覚ますアイスが隣で寝ていた。

 理解が出来ず時間が止まる。

 シーツの下を見ると2人共……裸だった。


「やっちまった……」


『優、いきなり青……』


「わー! 言うなクロスわかっている。焚き火の前で酔った勢いでやった事はわかる。みなまで、言うな!」


『スタートはあれだが、アイスは良い娘じゃ、問題あるまい……優はアイスが嫌いか?』


 嫌いじゃないし、嫌いなら一緒に旅をしない、とりあえず起こすかな。


「アイス、起きてくれ」


 アイスを起こす為に、体を揺さぶる。


「おはようございます。昨日は激しくて私……壊れちゃうかと思いました」


 赤くなりながら言うアイス。


『確かに、野獣のようじゃだぞ。優は性欲モンスターじゃな』


 どんな事をしたんだ。昨日のオレ、全く覚えてない。

 シーツで体を隠したアイスが、腕を絡ませながら、潤んだ目をしながらキスをしてきた。


「私、初めての相手がユウさんで……嬉しかったです。恋人がいない18年でしたが、よかったと思ってます」


 18歳。完全に15歳だと思ってた。


「アイス2人で頑張ろうぜ」


「うん! ユ・ウ!」


 まぁ、アイスはいい子だし、大丈夫だろう。


「よーし!今日も頑張るぞ」


 なんだか張り切るアイスを見ながらクロスに話しかける。


「アイスにお前の事、言っていいか? 正直、後ろめたい……」


『わかった。わかった。何度もしつこくいいよって口止めを、忘れるなよ!』


 オレの勝ちだ。しつこく言ってよかった。


「アイス! 実は大事な話があるんだ」


「なんですか? ユウ?」


「オレの師匠だ!」


 クロスを見せるがただの本にしか見えないので。


「……どうしたんですか? 二日酔い?」


『アイス初めまして、じゃない、ワシが優の師匠のクロスじゃ』


「……本が、本がしゃべりだした、腹話術うまいですね」


 まるで信じないアイスに説明したが、完全に腹話術になっている。やはり、残念ガールだったか……



♢♢♢



「街に着いたな、中々遠かったな」


「とりあえず、ギルドに行きましょう」


 ギルドはなんだか騒がしい。


「どうしたんた? 何かあったのか?」


「見ない顔だな? 来たばかりか?」


「今、街に着いたばかりでな、何があった?」


 冒険者は真面目な顔で教えてくれた。


「実はな。オークの大群が街に向かって来ていたんだが、突然消えたらしい。しかもだ! オーク共がいた地形が、変わり果てたらしい……今ギルドではこの話題で持ちきりだよ」


「へっ、へーえー、それは大変だなぁー」


「えっ、それって……」


 明らかにオレ達じゃん、トラブルはごめんだ。

 アイスにトラブルを避ける為に、内緒にする様に話をして、モンスターの買い取りをしてもらってから、ずらかろう。


「せっかくだし、美味そうな飯。食べに行こうか?」


「あっ、それなら、いい川魚の店知ってます。ここ、アリエスの街は、川魚が有名なんですよ」


 アイスと話してると職員が騒がしい。


「聞いてますか? 高いけど、大丈夫ですか?」


「あははは、大丈夫に決まってるだろ、見ろよこの大量のオークを……」


 オークの山を叩きながら、アイスに話をしていたが、気づいたら回りが静まり返っている事に……

 コレではオレがやったと、アピールするような物だ。

 肩を叩かれて振り向くと、明らかに偉い人がいた。


「君、詳しく説明してくれるよね?」


 笑顔のお偉いさんに、オレは諦めた。


「あれ川魚は?」


「無理だ諦めろ」


「そんなー。完全に口が川魚なのにー」


 嘆くアイスに、ダメなら作ってやるか、と考えてオレ達は長時間拘束された……





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