第6話 強盗はよくないよな


「もう、勉強はいいよー」


「そうですね。今日は、ここまでにしましょう」


 ギルドで買った魔物図鑑で勉強していたが、張り切り疲れてしまった。美味い物を食べたいな。


「なんか、変わった美味い物や、変わった所に行きたいな」


「美味しくて、変わった所? ですか?」


『そうじゃな? ダンジョンにいくか?』


「?」


 美味しい物や変わった所で、なんでダンジョンなんだ。怪訝けげんな顔をしているとクロスがつづける。


『ダンジョンは行った事がないじゃろ? 財宝があるから、美味いぞ』


「そっちの美味いじゃねぇよ!」


「ダンジョンならこれですよ」


 魔物図鑑で、ミノタウロスと宝石クラブをアイスが嬉しそうに見せてくる。


「ここから、3日ほどの場所にある。ギガントホールって場所にいます」


「ミノタウロスはわかるけど宝石クラブ?」


「殻が宝石、なんですが身がすごく美味しいらしいです、高級食材で食べた事はありませが……」


「ほう、宝石クラブかぁ……」


 クロスが何か企んでいるな……まぁ、そんなに、美味いなら食べてみたい。


「ギルドに買い取りを渡したら、行くか……」


「やったー、ユウといると高級食材がたくさん食べれて、嬉しいです」



 ギルドで買い取りのモンスターを大量に渡してから受付に行く。山のようなモンスターを見ると卸売り業者みたいだ。


「おめでとうございます。Cランクに上がりました」


「こないだ。上がったばかりだけど、良いのか?」


「クエストの達成数とモンスターの討伐数が、異常にあるから大丈夫です」


 職員さんが細かい説明をしてくれたが、大丈夫なようだ。


「あと、ギガントホールの討伐クエストを全て出して下さい」


「わかりましたが、他の方はもっと喜びますよ」


 引き気味の職員さんを無視して、馬車の手配をしてもった。馬車を待っていると、ガラの悪い冒険者が横入りしようとする。


「おい、みんな待ってるんだから、ならべよ。お前達!」


「はぁ? オレ達はCランク冒険者だぞ! お前達と違って忙しいんだ!」


 忙しい、緊急クエストか。そんな話は同じランクのオレは聞いてないが……


「緊急クエストとか、聞いた?」


「いえ、聞いていません……」


「うん? 青い髪に、黒髪の魔道士の2人組? こいつら例の2人じゃねぇか?」


 怯えるように冒険者は震えている。


「あんたら、ユウとアイスか?」


「そうだが……」


「こいつら最近モンスターを大量に殺している、ジェノサイドバカップルじゃねぇか?」


 ジェノサイドバカップルって初耳だぞ。なんだそれは、さっきまで、偉そうだった冒険者はおとなしくなり「すいませんでした」と誤って最後尾に並んだ。


「あんたらのおかげでスカッとしたよ」


 前のおっさんが、親指でグットを出しながら爽やかな笑顔をしていた。


「あ、どうも……」


「私達、みんなからカップルとして有名なんですね。公認のカップルみたい」


 嬉しそうにしているアイスには、ジェノサイドやバの部分が抜けた、カップルになっているようだ。



♢♢♢



 馬車の旅は快適だ。ケツの痛みがなければ……

 リンゴのような果物を2人で食べながら、流れる風景を眺めていた。


「素敵な旅になりそうですね」


「ああ、馬車の旅も悪くないな……」


 果物は美味いし、風景は綺麗だし、楽しい旅になりそうだ。みかんのような果物を2人で食べる。


「やっぱり、旅には冷凍みかんだよな、魔法で簡単に冷凍にできるから美味い」


「つめたっ……けど美味しい」


「そこの、馬車止まれぇーー!」


 外から怒鳴り声が聞こえる。何だろ……


「金目の物を置いて行けーー! 命だけは助けてやる」


「お前達は野盗か?」


「見ればわかるだろうが? お前はバカか?」


 いかにもな奴らが8人いた。


「このまま、帰れば見逃すが、帰るつもりはないか? オレ達は、旅を楽しみたいんだ」


「せっかくの獲物を、逃す訳がないだろうが! 死にたくなければ、言うとうりにしやがれ!」


「そうか、ファイアーストーム!」


ゴォォォオオオーー!


 8人の野盗は炎の渦に巻き込まれて倒れた。


「殺さないようにセーブしたけど、どうするかな? 殺すのは嫌だしな……」


「ギルドに出せば、お金が出ますよ」


「おっ、やったな! しかし、どうやって連れて行く? 馬車の中は、入らないぞ。あと、臭そう……」


 野盗達は、風呂に入ってないのか、酸っぱい匂いがして、地獄になる。


「あっ! いい考えがあります」


 アイスは笑顔で言った。



♢♢♢



「鬼! 悪魔! 助けてくれ!」


 野盗達は、馬車の後ろにロープで繋がって、強制的に歩かされている。馬車のスピードは、早くないから引きずられてはいないが……絵面が酷いな。


「叫ぶと、喉が渇くぞ!」


「今まで悪い事ばかりしていたんですから、しっかり歩いてください」


「ロープを多めに買ってよかった、崖登り用に買ったんだけど、こんな使い道もあるなら、追加で多めに補充するか」


『まぁ、運が無かったのう……』


 後ろで「人でなし」とか叫んでいるが、強盗をしようとした、こいつらが悪い。無視をして、次の町までしばらくそのままにした。


 村について、野盗を見たギルドの職員が、オレ達に「あんたら鬼か」と言われたが、しょうがない。


 ギガントホールに向けて、オレ達は出発した。更なる悪評が追加されたのを知らずに……



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