第7話 食べ過ぎには注意だな


「デカい穴だなー」


 目の前には、巨大な穴がポッカリあいている。どうやら、ここが、ギガントホールらしいが……


「いらっしゃい、いらっしゃい! ギガントホール名物のギガントステーキだよ!」


「らっしゃい、ギガントケーキだよ! 食べなきゃ損だよ!」


 出店のおっちゃんやおばちゃんが客を呼び、沢山の冒険者が並んでいた。


 ギガントホールの穴の近くにある街で、ギガント街があり、大食いB級グルメばりの巨大な食べ物が並ぶ出店が、沢山ならんで出店していた。


「なんなんだこれは、ダンジョンの近くなのに、凄いな……」


「ギガントホールは、ダンジョンですか、宝石クラブとミノタウロスを狙わなければ、危なくないですからね、モグモグ……」


  異様に肉がデカい串肉を、食べながらアイスが説明してくれた。


 穴の周りや浅い所は、全然危険がなく、高い鉱物や弱いモンスターが多いので、弱い駆け出しの冒険者や、ソロの冒険者には人気があるそうだ。


 そして、何よりすぐ近くの街の飯が旨い・安い・デカいで、大人気だそうだ。


「確かに、旨いが……みんな、太りすぎなんじゃね!」


 視界に入る、店の人、冒険者、町の住民はデブっていた。


「ギガントホールの別名は"堕落の穴"と呼ばれています。鉱物の発掘をすれば楽に大金が入るから、冒険者がダメ人間になると有名なんですよ」


「ヘェ〜、嫌な理由だな、大金が入って食べまくるから、こうなるのか……」


『買い出しが済んだら、いくぞ! 宝石クラブを狩りにな!』


 クロスは、宝石クラブと聞いてから異様にテンションが高い。


「お前がテンションが高いと、不安しかないんだが、大丈夫なのか……」


「大丈夫ですよー、お腹が空いた時ようの食べ物も沢山ありますから!」


 笑顔で、口の周りを油だらけのアイスが串肉を片手に、食い物が沢山あると言う。

 アイスがこの街にいたら、ダメな冒険者になるのは、目に見えているからな、ちゃんと見てないとヤバイな、別の意味で……


 ギガントホールの中は、かなり深くて広い。壁に沿って、螺旋状に道が出来ている。

 モンスターは所々にある、横穴に広がる穴にいるみたいで、滅多に出てこない。


「しかし、暇だな。モンスターがうじゃうじゃいる、イメージだったが、あんまりいないんだな。

ライトぐらいしか、使えないしな」


 オレ達の周りには、赤、緑、白等の様々な色の照明が光っている。属性ごとに、色分けされるようだ。


「この辺は、まだ深くないから、出てきませんよ」


 いつもは、モンスターを退治しながら歩いていたので何もしないで、歩く事はまずなかったから暇でしょうがない。


『全体的に見たら、うじゃうじゃいるがな』


「そうなのか?」


『ああ、ゴキブリ並みにいるわい』


「それは、気持ち悪いな……」


 言いたい事は、理解できるが言い方が悪すぎるんだよな。


 半日ぐらいかけて、一番下までついたが縦穴が多くあり、どこに行っていいか、分からなかったが、クロスが誘導してくれた。


「クロちゃん、なんで分かるの?」


 アイスが、クロスの事をクロちゃんって、呼び出した。まぁ、いいか……


『簡単じゃ。モンスターが多い方に行けばいるじゃろ』


「そいつは、確かに、簡単だな」


 ミノタウロスが、大群で現れるが新しく覚えた魔法で貫く。


「ブラストって魔法は、狭いダンジョンだと便利だなぁ」


「そうですね! 追尾しませんが、貫通するから、直線上にいる魔物は、全滅ですし全ての属性で使えるから、練習になります」


 ブラストは、射程距離が2〜3メートルの範囲内で敵を貫くレーザーみたいなもので、魔力次第で同時に放つ事ができる。狭くて長い場所なら、大活躍の魔法だ。


 ミノタウロスに、1〜2センチの穴が空き倒れていく。


「話だと、ミノタウロスも旨いらしいから、楽しみだな」


「分厚いステーキにしましょう!」


『そろそろ、じゃな……』


「? どうしたん、わっ!」


 ブラストが、何かに反射されてオレの横を通過する。


「アイスやめろ! 何かに魔法が跳ね返された」


 ブラストで貫かれた、ミノタウロスの先には半透明の巨大な蟹がいた。


『今日の特訓じゃ! 宝石クラブは、魔法を反射する能力がある魔物じゃ!』


「お前わかっていて、連れて来やがったな!」


『当たり前じゃ! 魔道士殺しの異名を持っているからな、だから高級食材なんじゃろうな』


 アイスの方を見ると知っていたらしく、笑って誤魔化している。


「クロちゃんとユウなら、なんとかなるかなっと思って……食べたかったし……」


 この、食いしん坊さんがやりやがった。


『武器に魔力を込めて、攻撃する練習に最適じゃからな、武器の中心から全体に魔力を込めてみるんじゃ』


 剣に魔力を込めると武器が、淡く光っているような気がする。


「かなり、難しいですね」


「アイスまずは、ミノタウロスを倒してくれ、貫通魔法は使うなよ」


 魔物の群れの前で、練習して全滅したら、笑えん。交互に練習する事にした。


 魔力を付加した剣で斬ったら。切り裂く事が出来たが、武器にひびが入る。


 数時間後〜


 生半可な武器だと、魔力に耐えられないようだが、今はしょうがない。

 蟹一匹につき、武器一つが消えていく……


「効率ワリ〜なこれ……」


『ユウは、魔力を込めすぎなんじゃ! アイスを見てみろ』


 アイスは武器に魔力を込める事には、苦戦していたが調整は上手く、4〜5匹ぐらいは大丈夫だった。


『仕方あるまい、素材から簡易式の武器を作る方法も教えてやるから、しばらくはギガントホールで修行じゃな! 2人共、ビシビシ鍛えてやるから覚悟するのじゃ!』


「えーー! 勝手に決めるなよ、クロス!」


「そうですよ! 食べ放題ツアーはまだ始まったばかりですよ!」


 そんなツアーに、参加した覚えはない。


『アイスよ、よく考えるのじゃ、ここは、食のメッカ、ギガントホール……蟹にステーキ、そして、街にもダンジョンにも、旨い物が山の様にある上にだ。ここで、修行すれば太る心配がないのじゃーー!』


「な、なんですってーー!」


 このの言葉に、アイスに衝撃が走る。


 この瞬間、修行は決まった。


 そして、宝石クラブの食べ過ぎでアイスが胃もたれで倒れ、寝込み、胃薬を作る羽目になった。





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