第21話 馬車は大事だな
倉庫を作った後から、オレ達の悪評はうなぎ登りに上がった。
今までは“変態パーティー“だったが、今は"外道パーティー"にランクアップをした。
オレには、"職員殺しのユウ"の二つ名がつき、ギフターブには、"幼女キラー"の二つ名がついた。
「「なんで、こうなったんだ……」」
ギルドの酒場で、オレとギフターブは落ち込んでいた。ただ、頑張っただけなのに……
他の冒険者からは、わかりやすく避けられていたが、アイスと双子は気にしない。
「他人なんて、どうでもいいですよ」
「私達だけ、いればいい……」
「邪魔者がいなくて、丁度いい」
ほとんどの理由は、コイツらのせいだが、今更しょうがない……
「今日は、馬車を最高に快適にしようと思う」
「えっ! 侵入禁止エリアの捜索は? 世界を救うんだろ?」
興奮する、ギフターブの気持ちも分かるが、長い旅の中で、硬い床に腰と尻を痛めたくない。重要な事なのだ。
「ギフターブ。オレ達の長い旅はまだまだ続く、コレからなんだ。旅の途中で、馬車が壊れたらどうするんだ?」
「もしかして、改造するのは……」
息を呑むギフターブ。
「トラブルを避け、頑丈で硬く、快適で早い馬車を作る為なんだよ」
「確かに、馬車が壊れたら1日が潰れる。早くなれば、新しい場所や目的地にも早く着ける! そうゆう事だな! ユウ!」
静かに微笑みながら、グットサインを出した。
「よし! 行こう!」
テンション高いな、ギフターブ。心なしか、双子も嬉しそうに見える。無表情だが……
馬車の木材を、デビルプラントに交換は完了していた。軽くて、異常硬い強度は上がったが、尻の問題がある。痔はヤバイからな……
馬車に揺られながら、悪評について考えいた時に。ギフターブが話しかけてきた。
「俺達は、何でこんなに、悪評が立つうんだろうな……」
「何でだろうな……」
馬車を運転しながら、そんな話をしているとクロスに言われる。
『なんじゃ。まだ、気づかないのか? ギフターブはともかく、ユウはわかりそうなんじゃが』
「どうゆう事ですか? クロス殿……」
『ワシは、最強の魔導書じゃぞ? 何の代価もなしに強大な恩恵を受ける事ができると思っとるのか?』
「「へっ?」」
驚くオレとギフターブに、クロスは続ける。
『"不評なる者達"ワシを所有する者は、犬を助ければ、虐待と叫ばれ、子供を保護すると、誘拐と指を差される、定めなんじゃ』
「つまり、いい事をしても悪く思われるって事なのか?」
『そうゆう事じゃな。好意を持つのは、変わり者か、爪弾き者とかじゃな』
そういえば、アイスは仲間から除け者にされていたし、ギフターブは元々嫌われ者だった。双子は変わり者だ。
クロスの奴め、後出しジャンケンみたいな事を……
しかし、このバットスキルが霞む程、クロスの恩恵はデカい。無限のような魔力、魔法の知識、様々なサポート、あのフルプレート。
「悪評はしょうがないのか……」
「そうですよ。逆に言えば仲間になる人は、本当に信用できる人って事ですよ」
「限定パーティーはいい……」
「悪人を排除する」
アイスと双子の言葉にはっとした。考え方を変えると確かに、そうだな。
下心や悪巧みで、近づく人間が減ったと考えれば、良いのかもしれない。
目的のアーデル山脈に着いた。今回は、スリープゴートとゆう羊を狩に来た。
なんでも、敵を眠らせてから、蹴り殺す羊だそうだ。
「さて、殴り殺すか、頭を飛ばすか。毛に血を付けたくないんだよな……」
「どちらにしても、酷いけどな……」
呆れるギフターブだが、血生臭い絨毯は御免だ。気持ち良く、寝れない。
オレが、ガントレッドで羊を殴り殺し。双子が金属バットで撲殺。アイスとギフターブはサポートをしてもらい。見える範囲の、魔物を全滅させた。
「さてと、毛も大事だが、肉も食いたかったんだよな」
結界を張り、スリープゴートを解体した後に、毛を洗い乾かした。
馬車に皮ごと打ち付ける。鍛冶屋から釘を買ってからすぐに終わった。
「モコモコ気持ちいいです〜」
「モコモコ最高……」
「夢心地」
馬車の中で、転がり回るアイスと双子。
楽しそうで何よりだ。
いつ拾ったか忘れていた、鉄の盾の内側を全て引きちぎり、盾の表面をガントレッドで殴ってへこむまで殴った。
「ユウ、大丈夫か? 相談に乗るぞ?」
心配そうにギフターブに見られながら、ジンギスカン鍋を作った。
「肉をコレはで食うんだよ」
「わざわざ、盾をダメにしなくても……」
正論をギフターブに言われたが、うる覚えなんだが、昔TVで、チンギスハンが戦場で鉄の盾を鍋にして、羊肉を食べた話を聞いた事がある。
「一度やってみたかったんだ!」
「そ、そうか、別に良いぞ」
盾で焼き肉を食べる。普通だった。
「ユウは、たまに変な事をするんですよね」
「そうなのか、ストレスが溜まってるのか」
ギフターブとアイスが、内緒話をしていた。
馬車は、フワフワの羊の毛で快適になったが、なんとも言えない気持ちになった。
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