第22話 確認は必要だったな


 羊の毛を狩り、馬車が快適になった帰り道。


「100%ウールは最高だな」


 御者席の座り心地は、最高だった。グッバイ、痔になる未来。


 ギフターブと双子は、相変わらずくっついてモコモコの毛を楽しんでいるうちに寝ていた。

 

 アイスは、さっきから後ろで騒いでいた。


「今日は、馬車で一泊して一緒にモコモコしましょうよー」


「帰ってから、色々やりたい事があるんだ」


 最近、クロスから錬金術を習っている。なかなか面白いから、明日は休みにして宿で練習したい。


「クロスと、アイディアを形にしたいんだ」


「また、錬金術ですか? 私がお手伝いをしますね。だから、今日は泊まりましょう」


 アイスは、いつも雑用をしてくれる。正直、助かる。魔道士だから、簡単な説明ですぐに理解してくれるから、効率が跳ね上がるのだ。


「わかったよ。泊まりにするか……」


「さすが、ユウ。話がわかります」


 馬車を道からどかし、結界を張ると騎兵の大群が来た。

 

「どうしたんだ?」


 ギフターブと双子が眠そうに、馬車から出て来たので騎兵が来た事を教えた。


「ヘェー、スペルの傭兵団だな、アレは……」


 ギフターブが、説明をしてくれた。対人間最強のスペル傭兵団は、他国の要請が有れば報酬次第で戦争に参戦する荒くれ者の集団。スペル王国が

運用する傭兵団になる。


 団長らしい、左目に眼帯をつけた歴戦の戦士のような男が、軍馬から降りると大声で話かけてきた。


「君達が『アイスとユウのラブラブ、愛の花園とその仲間達』だな!」


 この渋い戦士が何を言っているのかが分からずに、脳が停止していた。ギフターブも同じ状況らしく、2人で固まる。


「「……」」


「はい、私達がそうですよー」


 アイスが、元気よく答えると眼帯の戦士は安心したように笑った。


「おー、そうか、ギルドでパーティー名を聞いた時は、こんな恥ずかしい名前は冗談だと思ったが、会えてよかった」


 オレも冗談だと思いたい……そういえば、パーティー名はアイスに任せていた。字が書けないし読めないから、なんでも良いと思っていたが、こんな名前だったなんて……


 膝から崩れて落ちるのと同時に、アイスに頼んだ、あの時の自分を殺したいと心の底から思っていた。


「信じた、オレが馬鹿だった……」


 その一言だけが、精一杯だった……


「大丈夫か? 貴方がリーダーのユウ殿かな?」


 眼帯の戦士は、スペル傭兵団団長のガイス・スペルでスペル王の弟で右腕の男。

 戦闘が三度の飯より好きで、王ゆり傭兵が合ってると王位正当権を放棄した話は有名らしい。


「ガイスさんは、何のようですか?」


「実は、魔樹の大森林から大量の虫系と植物系の魔物が群れを為して、スペルに押し寄せて来ているんだ」


 大群の魔物には、傭兵は役に立たない。そこでガイスは、冒険者ギルドに行き、ギルドマスターのヴィルマから、オレ達を紹介されたそうだ。


「ヴィルマ殿が、今回は特別報酬を奮発するから引き受けて欲しいと言っていた。私からも頼みます。あれだけの魔物が国を襲ったら、スペルは崩壊する。時間がないのだ……」


「少し、相談させてくれ……」


 アイスには、言いたい事が山のようにあるが、今は魔物の群れが優先だ。意識を取り戻した、ギフターブを合わせて話し合いとなった。


「助けるべきだ! 困っている人は、ほっとけないよな」


「どうせ、魔物は全滅させるんてますから、丁度良かったですね」


「善行はいい事……」


「魔物はダメ絶対」

 

 それぞれの意見は、賛成だがなぜ魔物が来ているのか、疑問に思った。


「魔物は、どうしてスペルに来てるんだ?」


『簡単な理由じゃよ。食料不足じゃ』


 食料不足? 大森林なのに?


『ユウ、思い出せ。この前、雑魚供を全滅させただろ。今、来てるのは、大森林の奥で雑魚供をエサにしていた奴らじゃよ』


 えっ。じゃあ、オレ達のせいなのか? 

 コレは、まさかのマッチポンプじゃないか!


「ヤバイぞ、ユウ……」


 事件の真相に気付いたオレとギフターブは、冷や汗をかきながらガイスに言ってやった。


「国の一大事に、報酬は受け取れません。オレ達が解決します」


 感激するガイスに罪悪感から、吐き気を感じながら、馬車で魔物の群れに向かった。


「すげー景色だな」


 巨大な団子虫に巨木、巨大ムカデ、巨大なアリ等の大群が走って向かってくる。


 ジブ◯の風の谷の作品でみたな……


 危険だから、避難をする様にガイスには伝えたのでオレ達だけだ。


『ワシに任せるんじゃ。お前達! 久しぶりに大魔法を見せてやろう! 体を借りるぞ、ユウ!』


 クロスが、今まで一度も呪文を唱えた事がなかったが、よくわからない言葉で唱えたいた。


「極位魔法・メテオ・バインドフォール」


 魔物達の動きが止まり、空から流星群が魔物の群れに当たると爆音と共に、巨大なキノコ雲を作りあたり一面をクレーターの穴でボコボコになっていた。


『みたか、敵を拘束してから、流星群を叩き込む、ワシの魔法じゃ』


「な、なんて……威力だ」


 ギフターブが、腰を抜かして座り込んでいる。


「「「……」」」


 アイスと双子は、口を開けたまま固まっていた。


 舞い上がった、砂煙はしばらくは消えなかったが消えた後には、魔物が1匹もいなかった。


 爆音を聞いたガイス達がキノコ雲と大量のクレーターを見てから、一言呟いた。


「奴らは、化け物か……」


 ガイスの命令でユウ達が魔物の群れを倒した事に、戒厳令が出された。


 


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