第14話 町の変化に
お盆の期間、あじさいリハビリクリニックは休みに入り、私はこの休みの間に毎年祖父母の家を訪れている。先祖の霊を迎えるために。そして親しかった人達の霊も…。
これまでは日帰りだったけど、今回は一晩泊まらせてもらう事にした。それは前田君の眠っているという安音寺にお参りしたかったからだ。
二ヶ月ぶりに私はあの懐かしい街の匂いを胸に吸い込んだ。駅にはおじいちゃんが迎えに来ていた。
「まるで小学生の頃みたいやね。迎えに来んでもいいのに」
「いいや、最近はこんな田舎街でも物騒やけ」
「そうなん」
確かに何か二ヶ月前とは違う、どんよりしたような、それでいて張り詰めたような空気が駅の周辺に漂っていた。行き交う人々の顔にも心なしか緊張と疲労感が見える。
でもそれは自分の心の中の悲しい気持ちがそう見えさせているだけかもしれない。同級生がこの町で無惨な亡くなり方をしていたから。
もう一度見回すとやはり田舎の長閑な街に過ぎなかった。
「ただいま」
私は庭の木戸を開けた。夏草の匂いがした。家の中に入ると、いつもと変わらないおばあちゃんの夕食の優しい匂いがする。
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