第18話 救急外来で



「一つ聞きたいのですが、最近この町で起きていた通り魔事件と今回の事って関係があるのですか」

私は恐る恐る聞いた。


「関係は…」と中年の刑事が言い淀んで「特にない。そっちも犯人は今日捕まったよ。全く何て日なんだ。こんな田舎町で傷害事件の犯人が二人捕まるなんて」


 看護師と医師が診察に訪れた。二人の刑事はまた後で話を聞かせてもらうと言って一旦部屋を出て行った。


 代わりに家族がベッドサイドに来て診察に立ち会った。医師は打撲や傷の様子を見て、思ったより軽くて良かったと言った。

 それにしても気がしっかりしてますねと感心された。自分の娘なら大騒ぎをしているだろうと。

両親と祖父母は心配で胸もつぶれそうな様子だった。


「お義父さんもお義母さんもなんで亜美を一人で知らない墓地へなんか行かせたんですか?」

 医師が場を離れると父は怒りを顔に顕にして言った。母は涙目だった。でも私は二人をなだめるようにして、自分の責任だと言い張った。私にはここで決着をつけないといけない問題があると感じていた。前田君の死の事や十三年前海に誘ってくれた人の状況について分かる限りの事を知って向き合いたかった。もう悪夢をみないで済むように。それは今回あまふり町を訪れた時から感じていた事だった。

 夏菜ちゃんが恐る恐るといった感じでやって来た。


――そうだ、夏菜ちゃんとお寺で会う約束をしていたんだったっけ――


 夏菜ちゃんは、その日私を待っていたもう一人の人物が病院まで来ている事を伝えに来た。夏菜ちゃんとその紹介で会う予定だった人。遠くから見えるその人は小柄で、まるで凍った湖のような雰囲気の中年の男性だった。



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