第23話 事件と結び付いた時
「ただ被害者の個人名が一部メディアには流れていて、そこからSNSに行くと確かに缶詰会社に行き着くんです」
「行き着いたってどういう意味なんだ?」
「被害者は若い男性、中年の男性、高齢の女性、若い女性とバラバラと言われていました。若い男性は大学の理工学部でゼミ論を書いているうち、この地域の工場排水の真実を突き止めた事を企業名仮名でブログにアップしてました。中年の男性はダブルワークとして夜間の工場での仕分け作業していたんですが、その際大けがをして、でも労災隠しされてしまい、質問サイトに相談していました。男性にはダブルワークの弱みもあるらしくて、労基に相談していいのか悩んでいたみたいです」
私はあっけにとられていた。牧村氏も驚いていた。
「ね、牧村さん。この通り魔の犯人は捕まったんでしょ? 昔の同僚の刑事さんから何か聞いていないですか?」と私は
「それが…。報道でも仲間から聞いているのでも犯人は実名もあがっているんだけど、四十代の無職の男で、ストレスが溜まってやっただけという話なんだ。どうせ誰かから金をもらってやっていた反社会的な奴だろうと思い、私は信じていないが…」
「それで、トミボン、被害者の女性達は何かアップしてたの?」
「高齢の女性は缶詰の中に含まれていた保存料が原因で顔に紅疹が出来て
「いつの間にそんなすごい事になっていたの? でも私は何もアップなんてしていないのに…」
「亜美ちゃんの犯人は違うからね。単純に前田父で、心を病んでの犯行だから」
「そうか…。ねえ、湯本君、またはトミボン。さっき言った事を昔の同僚に話してみるから協力してもらえますか? これはきっと何かしら組織的な犯罪なんです」
と牧村氏は身を乗り出したまま言った。その瞳の奥にはこの店に来た時と違い、情熱が溢れていた。
「もちろん。僕はそうしたくてここに来たようなものですから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます