第15話 あまふり町で起きている事件
夕食の後片付けが終わると私はスマートフォンも触らずにおじいちゃん、おばあちゃんとテレビを見ていた。この田舎の家にいるとスマートフォンは触る気にならないのだ。二人ともテレビが好きで、特にニュースをよく見る。基本、テレビのチャンネルは国営放送になっていて、全ての時間帯のニュースを見る事になる。
ローカルニュースでもないのに、この小さな街の名前がニュースのテロップに出てきた。しかも事件みたいだ。
「連続傷害事件の続報です」
「何これ?」
「最近この辺で通りすがりの人にナイフで切りつける通り魔の事件が起きとってね。今の所、浅い傷ばかりみたいやけど怖いから…」とおばあちゃん。「だからあんまり夜遅くは出かけんようにね」
「そんな事が起きてるんやね。無差別事件なの? 変質者かねぇ」
おじいちゃんは湯のみの緑茶を飲んで、ニュースに見入っていた。おばあちゃんは言った。
「そうやないみたいよ。若い女性目的なら変質者が疑われるけど、これまでの被害者は若い男性、中年の男性、高齢の女性、若い女性とバラバラやから」
「じゃ、ただの嫌がらせかも」
テレビのニュースでも、警視庁が無差別という見方を示しているとアナウンサーが読み上げていた。
おじいちゃんはまた一口緑茶を飲んで異論を唱えるように言った。
「いや、それが割と計画的らしい。それにこれまでの被害者には共通点があるとゆうとる人もおるけん」
それに対し、「もう!」と制するようにおばあちゃんが言った。
「何なん? おばあちゃん。何か言っちゃいけん秘密があるん?」
「ないけど、変に探偵ぶって余計な事に巻き込まれたくないから」
探偵という言葉に私はトミボンを思い出した。まさに今私の頼れる探偵。謎解きみたいな事が好きみたい。でないと単なる仕事つながりの知り合いのためにいろいろ調べたり分析したりはしないだろう。
私は離れの灯りをつけ、スマートフォンのメッセージアプリを開いた。トミボンからのメッセージが入っていた。
――あまふり町では連続傷害事件が起きてるみたいだから、気を付けて。お参りも一人で行かない方がいいよ――
私は笑顔のスタンプを貼った後、返事を送った。
――気を付けるから大丈夫。ありがとう! それにこの事件は計画的で共通項のある人が狙われてる説があるらしいよ、byおじいちゃん――
トミボンから続けて2つメッセージが来た。
ーーあと、調べた事→→あまふり町ってフルーツ缶のおとひめ缶詰で
ーーそれから気になる事が一つ。ミスミコーポの今の所有者ってどんな人なんだろう? ふつうそんないわく付きの物件買うか〜と思って。今度その不動産屋の友達にきいてみてーー
私はふっと安音寺の場所を
「亜美ちゃん、前田君のお参りに行く日教えてね。私も行けたら行こうと思って。それに亜美ちゃんに会いたいって人がおるんよ」
「誰? それ。同級生?」
「それは会ってからね。オトコマエな人」
――誰なんだろう。この町に親戚以外の知り合いなんていないはずなのに――
同級生の顔を一人一人思い浮かべてみても自分に会いたいという可能性のある人物にピンとこなかった。
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