概要
奏鳴曲とは、音楽のソナタのことです。
ソナタとは、クラシック音楽に於ける形式のひとつで、ピアノ・ソナタは原則的に3乃至4楽章から成り立ちます。
その形式や編成は時代によって異なりますが、或るモチーフを繰り返し使用するという共通項が、あるでしょうか。
このたび『白百合の病』というモチーフを飽くことなく使いたい筆者が、実験的に『白百合の病』に関わる人々にインタビューを試みた結果、キャラクターは流暢に語り始めました。本編で語られることのなかった、さまざまな想い。
想いは書き込み過ぎないほうが、いい。そう信じていた筆者にとって「良いのか悪いのか分からない方向転換」が知らないうちに成立した結果を、筆者が客観的にWeb
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- ★★★ Excellent!!!限りなく透明に浄化されていく「生」の一瞬。
命の終わりに向かう。
それは人の心から光を奪い、痛みや苦しみに満ち、健やかな美しさを奪っていく過程。
誰もが、そんな印象を抱いているはずです。
けれど、この物語に綴られる病——「白百合の病」は、不治の病でありながら、そういう薄暗い恐ろしさをむしろ遠ざけていくような、実に奇妙な病です。
不思議なことに、病に罹った年齢から、患者の容姿は「成長(老化)」を止めてしまいます。
少しずつ進む病状。若々しい容姿をそこに留めたまま、その肌を次第に白百合の色に変えていく患者たち。それでも確実に死へと向かっていく緩やかな時間の中で、患者たちは少しずつその思考をも変化させていきます。——「少年少女」へと。
これ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!温かな硝子函にの中に、どうか閉じ込めて。
冷え切った空気のようにピンと張りつめていて、それでいてどこまでも透明で、透き通っている。それなのに、函の中のように温かい、幻想的な文章。徹底された言葉選びからは、神経をすり減らすほどの妥協のなさがうかがえる。
シェイクスピアの『ハムレット』に登場するヒロイン・オフィーリア。オフィーリアが川面に恍惚の表情を浮かべて浮く、有名な絵。そしてドビュッシーのピアノ音楽が見事に融合された作品。
この上記二つの要素に加えられたのは、美しくも儚い「白百合の病」。この病が登場する作品群は、作者様の全体の作品群の中でも重要な位置にある。どれも素晴らしい作品だ。これらの物語が絡まり合って、この作品は構成され…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しく儚い、けれど揺るぐことのないオフィーリアの世界
一度読み始めたら独特の透明な世界にさらわれる。
これは著者である宵澤ひいなさんの作品群すべてに共通する磁力のような魔力です。その世界は崇高で、穏やかな哀しみに包まれていて、控えめなユーモアがあります。
この作品はそんな宵澤さんの精神世界をさらに深く掘り下げ、さらに感性を研ぎ澄ませ、著者の永遠のテーマともいえる「透明」を追求したお話です。
オフィーリアに象徴される永遠の少女性。それは透明な魂を象徴するものでもあります。濁りない感性をそのまま凍結させるかのような物語は、現実の世界に生きることを余儀なくされる者へカタルシスのように沁み込んできます。どう生きようと、どれだけ歳を経ようと、人は心のう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!白百合の病が教えてくれる、生きることと愛の美しさ
諦観とは仏教用語。迷い、悩みながら本質を見極め、執着を捨てて悟りに至る。執着を捨てるために、前向きに諦めるのです。
白百合の病にかかったミヨシくんもササオカさんも、苦悩し涙をこぼしても、達観しているように静かに語ります。透明で美しい語り口に、読者は感情を揺さぶられ、涙してしまいます。
白百合の病は、生きることも、大人になることも、日差しを浴びることも困難です。白百合の病にかかった者は、たくさんのことを諦めないといけない。
けれどそれは不幸な病ではなく、生きること、死ぬこと、愛することの本質を炙り出す病でもあるのかなと。
ミヨシくんもササオカさんも、前向きに諦めていくなかで、諦観の境地に立…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しき白の病が齎すは、透けるような命の灯と、鼓動の隨に響くピアノの音色
『白百合の病』という謎の奇病をメインテーマに紡がれゆく、珠玉の短編連作です。
作者さまの他作品にも登場するこの病は、罹患者の時間を止め、身体の自由と色彩を奪います。
病に冒された当人やその周囲の人々の抱く想いが、美しく繊細な文章で綴られています。
治療法のない病に身を蝕まれた時、人は残された時間をどのように過ごすのでしょう。
本来あるべきだった未来が、丸ごと白く染め抜かれてしまったような時間を。
ある人は、絶望して歩みを止めるかもしれません。ある人は、それでもなお日常に希望を見出すかもしれません。
一つ言えるのは、彼らが過ごしたその時間は、見た目通りの空白ではないということです。
奇しく…続きを読む - ★★★ Excellent!!!Spherules――晶出した美の琳瑯が奏でる束の間と永遠の瓊音
もう退会されてしまったのですが、私が大好きだった短編集……というのでしょうか、否、あれはイメージが言葉で象られた結晶と言うべきなのでしょう、『Spherules』という作品を物される方がいらっしゃいました。
spherule(スフェルール)とは岩石や鉱物が一度融けた後、空中で再冷却されて固化した球状の粒子のことなのだそうですが、御作を拝読しておりますと、このspheruleという言葉が何時も何時も頭を擡げてきます。この上なく強固で濃密な、確乎たる美のイメージが溶融したネクタールのその温もりの中から、美は宛もエーテルのように揮発して、恐るらくは午天の赫奕たる太陽ではなく玲瓏と夜天に耀く太陰を…続きを読む