第4主題 僕の日常
大学院生たちは
もとピアニスト。肩書きが重く
「ほぼ完璧だ。でも最後、極端にデクレシェンドしてほしい。もっと小さく、もっと
未来のピアニストを夢む若者は、僕の指示を踏襲した音色を響かせる。
「……結構だったよ」
「ありがとうございました。
素直な生徒に当たり散らすわけにはいかない。
「結構な演奏を聴かせてもらったよ。ありがとう」
その言葉の裏に、
本当は僕だって、
そんな思いを伏せて、表面を繕う。
僕は平穏な心で、色んなものを
非常勤の仕事は、火曜日から金曜日の
分からぬまま土曜日は、ぐったりと自宅に引き籠もって過ごす。
日曜日、少し体力が回復するので、生活に必要最低限の食料と日用品の買い出しに行く。視力障害のせいで車には乗れない。地味に歩く。重いものが持てない身体になったので、暗色のショッピング・カートを引っ張る。昼間は目立って、いけない。
月曜日が来る。同じ時間のバスに乗り、白百合研究室に治療に行く。僕の日常。きっと生命、果てるまで変わらない僕の日常だ。
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