決意

「シザリスが好きだから、辛い」

その言葉を聞いた瞬間、目の前で宝石の様な涙を溢す少女を攫ってしまおうと決意した。


こんにちは、こんばんは……否、或いはおはようございますと言えば良いのかもしれませんね。この本を読んでいる方に改めて自己紹介させて頂きます。私の名前はブラッド・ブラッグ。悪吸族という悪魔や魔族といった類の血を主食とする種族の生き残りになります。そして私に抱きついている愛しい愛しい少女は魔王の娘であり、現国王の許婚にされているというエネミー・ヴァイオレットさん十三歳。菫色のハネ気味な綺麗な髪と澄んだ紫色の瞳を持つ人形の様な……否、人形として扱われている少女です。私の目的はエネミーさんかそのお父様であらせられる魔王の血を吸うことでしたが、今は『エネミーさんを救う事』を第一に行動してますね。

「ブラッド、あんな感じで大丈夫だったかしら」

不安そうな面持ちで、エネミーさんが尋ねてくる。それ以上、シザリスの事で苦しもうとしなくて良いのに。

「お別れはあんなもので良いんですよ。こんな広いようで狭い世界、回ってればいつかまた出会えるかもしれませんし」

「そう? なら良いんだけれど……」

かくして、僕とエネミーさんの二人旅は幕を開いたのでしたーー。

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